会社が乗っ取りに?特殊株主の襲来も?今 株主の属性調査が必要な理由

2020/10/29

企業乗っ取り

上場企業の株式売買が当たり前のようにオンラインで行われる現在、その企業がまったく予想もしなかった株主が突然現れることがあります。それが善良なエンジェル株主や利ザヤ稼ぎ目的の短期売買ならいいのですが、会社の乗っ取りを企てる悪意ある株主や株主総会で不規則発言を繰り返すような特殊株主である可能性もあります。
昨今は物言う株主に対しても、丁寧な対応をしないとガバナンス面で各方面から指摘を受けかねない状況にありますが、一方で前述のような歓迎されざる株主を放置することで企業が取り返しのつかない事態に追い込まれるケースも報告されています。この記事では特殊株主の実態をその目的別に概説するとともに、半期に一度開示される株主名簿に属性が分からない株主がいた時の調査の必要性と調査方法を解説します。文末では属性不詳の株主対策に遅れを取り後の祭りになってしまった事例を紹介します。

 
1. 歓迎されざる株主はこんなにいる
 

現行の証券市場における株式売買の制度下では、その素性や属性などで事前に株主を選別することはできません。5%以上の大量保有の場合を除き、年に数度 株主名簿管理人から開示される株主名簿で閲覧するまでは何処の誰が新たに株主になっているかは分かりません。そうした新規株主の中に歓迎されざる困った株主が潜んでいるかもしれません。この章では、なんらかの対応策を求められる問題ある株主を分類し俯瞰します。
 

1-1. 総会屋

かつて1970年代後半には総会屋は8,000人も存在したとされています。
1株だけ購入し株主総会に乗り込み、進行を仕切り反対派の発言を封じる(進行屋)、企業や議題に対する攻撃的な発言で進行を妨害する(荒し屋)、出版物の購読や広告掲載を強要する(出版屋)などの行為で企業から不当に金員を取得する勢力を総称し総会屋と呼びます。その多くが暴力団の構成員であったり、周辺者として関係を指摘されたりしていました。企業側は荒し屋からの攻撃を防衛するために進行屋を雇ったり、荒し屋の脅しに屈して金員を払ったりと、総会対策のために総会屋に支払う予算を計上していた企業も多くあったようです。
しかし、1981年商法改正により単位株制度の導入と利益要求の禁止が制度化、後の単元株制度導入などとともに総会屋排除への機運の高まりの中で、多くの総会屋は株主総会から締め出され衰退してゆくことになります。
警察庁の統計では、2018年(平成30年)時点での総会屋の人数は210人とされています。
 

1-2. 総会で不規則発言・行動をして議事妨害する特殊株主

2018年11月 特殊株主H 逮捕の報道がありました。Hは上場企業など950社の株を保有し、株主総会で不規則発言などを繰り返す「特異株主」として知られている人物です。この人物の場合は完全な個人プレーで総会の議事進行を妨害したり、不規則な発言で途方もない要求をしたりするものの、それをやらない代わりに金品を要求したりしないのが特徴です。警察沙汰になったり、総会で強制的に退場させられたりするのを楽しんでいるか如きの行動で各企業を困らせています。Hのような存在は極特異ではありますが、程度の差こそあれこうした愉快犯的な株主が存在します。
 

1-3. 敵対的な要求を突き付ける物言う株主

「物言う株主」とは株主の権利を行使し投資先企業の価値を向上させ株主の利益を最大化するために経営の見直しを求めたり、株主提案を行ったりする株主の総称(アクティビストとも呼ばれます)です。投資ファンドや年金基金の他、保険会社・信託銀行などの機関投資家もこれに該当します。物言う株主は基本的に株主利益が第一義ですから、広くステークホールダーを意識し会社全体の利益と中長期的な成長を旨とする企業側の経営方針とはおのずと敵対することになります。
 

1-4. 日本市場での裏口上場を狙う中国系ファンド

2017年に公開された「ザ・チャイナ・ハッスル」という映画で、アメリカの上場中国企業の8割は裏口上場だと暴露されました。裏口上場とは、業績不振・資金ショートなどで時価総額が下落している上場企業を買収し、別の未上場企業の事業を移管して、煩雑な上場審査を受けずに上場を果たしてしまう反市場的行為。中国や香港市場では横行してきた行為と言われますが、近年日本でも中国系の企業やファンドがこのスキームを駆使して日本の証券市場に進出しているケースが散見されています。この行為の餌食になった企業はいわゆる「ハコモノ」扱いで、元の事業は切り捨てられ、役員は全員解任などの憂き目にあっています。

1-5. 他人のふりをして集団で買い付け潜行し会社乗っ取りを謀る株主

日本の証券市場には、上場企業の発行済み株式数の5%超を保有する株主(大量保有者)は、原則として5%超を保有することになった日から5日以内に、内閣総理大臣に「大量保有報告書」を提出する義務があります。裏を返すと、5%未満であれば報告・開示の義務が生じないことを逆手に取り、上場企業の乗っ取りを実行するグループが存在します。多数の法人や個人投資家でグループを形成し、狙いを定めた低位株の上場企業に対してそれぞれがまったく関係が無いことを装って5%未満の株買い付けを潜行させます。そしてそれらを合算すれば十分に影響力を行使できるまで買い進めたところで、株主提案を出し総会で多数派としてその企業の意に反する議案を可決させて乗っ取りを成立させるのです。このスキームは裏口上場に使われるケースもあれば、中身の無いIRを乱発して株価を吊り上げてから保有株を売り抜ける「ハコモノ扱い」のケースもあります。
 

2. 属性調査の方法

証券市場は開かれたマーケットですから、資金さえあれば誰でも株式の売買ができます。それが歓迎されざる投資家であっても上場企業側で事前に排除することはできません。素性の分からない大株主が出現したとき、手をこまねいているだけでは、後に攻撃や乗っ取りに遭ってしまう可能性を放置することになります。上場企業としては株主の素性や属性、他株主との関係性などをしっかり把握して株主対策に当たらなければなりません。
本章では株主の属性や素性を知るための調査方法を解説します。
 

2-1. 検索(記事、官報、EDINET など)

検索だけでも得られる情報源はそれなりにあります。

▪ 記事検索(メディアチェック)
過去に事件を起こしたり逮捕されたりしている法人や人物では無いのか、これは最低限チェックしておかなければなりません。

▪ 官報
官報の検索により、「帰化情報」「代表就任の企業」「決算公告」「解散公告」「保証金取りもどし公告」「企業の破産」「個人の自己破産」「国家資格」などの情報が得られます。その株主の足跡や素性を炙り出すヒントが隠れている場合があります。

▪ EDINET(有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)
2007年4月より電子化されたEDINETでは上場各社の「大量保有報告書」「有価証券報告書」「適時開示情報」などを検索することができます。任意の法人名や人物名でも検索することができ、対象の株主が他の企業の株式を大量保有していないか、他の企業に対して反市場的行為を行ったことがないのかなどの情報を得られることがあります。

▪ ネット検索
その法人名や人物名に「詐欺」「逮捕」「反社」「ハコ」「乗っ取り」などのキーワードを加えて検索することにより、その株主のネガティブ情報が浮上してくることがあります。それは掲示板の書込みであったり、ブラックジャーナルの記事であったり真偽不明の情報も存在しますが、警戒すべき株主かどうかの判断材料になるケースは少なくありません。

2-2. 取引銀行・主幹事証券会社に相談

前述したように、かつての総会屋は暴力団関係者やその周辺者であるケースが大半でした。反社会的勢力との関係性をキーにして取引銀行や主幹事証券に照会をかければ、ある程度の判断材料は提供してくれていました。しかし、現在は証券市場に暗躍するアクティビストや乗っ取り屋、特殊株主などは必ずしも反社会的勢力との関係性があるとは言えないのが現状です。銀行にしても証券会社にしても、こうした歓迎されざる投資家や株主などの勢力を業界横断的にリストアップはできていないようです。かたや、株価操縦やインサイダー取引なども含めた反市場勢力への意識が高まってきていることも事実で、主要都市銀行や大手証券会社では独自の情報を基に融資や取引可否の判断をしていることは間違いありません。気になる株主がある場合は臆することなく取引銀行や主幹事証券会社に相談をしてみるべきでしょう。

2-3. 外部機関に調査依頼

株主名簿に記載される情報は法人の場合「企業名」「本店住所」、個人の場合は「氏名」「住所」のみです。
法人についてはホームページがあって事業実態が存在すれば、一般の方でもある程度の株主の属性情報などは得られます。しかし、ホームページが無いペーパーカンパニーだったり、誰かの資産管理会社だったりする場合はどのような属性で信頼できる企業なのか、代表者はどのような素性なのかも分かりません。個人の場合はなおさらその素性や属性情報は得難くなります。

正体不明の株主が不自然に上位に出現した際は、種々の検索や銀行・証券会社等への相談とともに外部調査機関に調査を依頼すべきです。そしてその調査結果が歓迎されざる株主であったなら、近い将来この株主が起こすかもしれない行動を想定して、株主総会などへの対応策を策定しておきましょう。
 

                                     株主調査をご検討なら株式会社トクチョーまで

 
3. 【実録】上場会社が乗っ取られる現場を見た!

『スマイルアス株式会社 乗っ取り劇の顛末』

この事例紹介は、実際にあったケースをベースに創作したものです。
法人名・人物名は全て架空にて作成しています。

20××年4月5日
新興市場上場のスマイルアス株式会社 経営管理部の藤本功は公開された株主名簿を眺めてある疑念を膨らませていた。
半期前の株主名簿と比べて、素性の分からない大株主が確実に増えているのだ。
また、9月に判明した大株主もさらに買い進んでいる傾向が見て取れる。
それぞれの大株主が単独で買い集めているのか、いくつかの株主が足並みを揃えて意図のある動きを しているのかは分からないが、この状態で次の株主総会を迎えたらまずい事になるかもしれない。

4月20日
素性の分からない個人株主 田中智也氏から面談の申し込みがあった。なにやら提案をしたいと言っている。
3日後の午後にアポイントを取り来社することになった。

4月23日
田中智也氏が1人で来社。歳のころで50半ば、ツイードのジャケットにベージュのパンツのビジネスマン風とは言えないカジュアルないで立ち。株主名簿の住所からすると遠方からなのか、やや大き目なキャリーケースを転がしてやってきた。
まずは1時間を超える時間を費やし、当社の経営状況に対する現状分析と批判を展開した。かなりしつこい。
そして、具体的な内容には触れないものの「新規事業を立ち上げて業績回復を図るべきだ」と主張。 ひとしきり持論を演説し、最後に「いずれ株主提案を送る」と言い残して帰っていった。

この訪問は敵対的なアクションへの狼煙なのか?

4月24日
昨年9月以来の大株主の動き、先日の個人株主 田中智也氏の不可解なアプローチなど、今後の経営にも影響を与えかねないということで、素性の分からない10社・5人の大株主の調査を外部機関に依頼することになった。

5月30日
外部機関から報告書が提出された。点と点が線で繋がってしまった。
薄々予感はしていたものの、調べた株主たちのうち6社・2名が過去なんらかの形で関係性を持っていたのだ。
確かに我が社は長引く業績低迷で株価は低迷し時価総額は落ちるところまで落ちていたのは事実。
この状況を付け狙う勢力のターゲットにされてしまったのか?
その目的は“裏口上場”か、はたまた“ハコ企業扱い”か?

しかし、今あからさまな動きをするとインサイダー情報の流布になりかねず、やれることは無い。
手をこまねいていなければならないのか。

10月5日
株主名簿の公開。問題の大株主たちはさらに買い進んでいる。さらに素性の分からない法人・個人の株主が散見される。春に調べた大株主と今回判明した新しい株主が万が一同じ方向を向けば、その株式比率は40%を優に超える。
藤本功はその憂慮すべき事態に背筋を震わせた。

10月28日
恐れていたことが現実になった。
問題の株主の一人 田中智也氏が弁護士を立てて株主提案をしてきたのだ。
その内容は、長引く業績低迷に対する現経営の無策を指摘し、新たな事業を盛り込む一部定款の変更と 取締役・監査役の選任を提起している。候補者には春に株主調査した法人の代表者や役員も含まれている。
現取締役で候補に挙げられているのは2人だけだ。
この流れからすると、次回株主総会への議題として加えなければならない。
こうなってしまったら、もう抗うことはできないのか。

12月13日
とうとうその日が来てしまった。株主総会。
春に調査をして関係性が確認された株主は全員出席している。
株式比率40%超。株主提案の田中智也一派との関係が判明していない株主も何名かいる。
議場の空気に流されて関係が無くても巻き込まれる株主もいるかもしれない。
事前に根回ししているシンパの株主の比率では太刀打ちできそうにない。

議事は進み、現経営から提案された議案はことごとく否決されていく。
そして、いよいよ株主提案の議題の決議の番となり、あっさりと賛成多数で可決。
秘密裏に進められた合法的乗っ取りが成立した瞬間だった。

議場の喧騒をよそに、今後の身の処し方に思いを巡らす藤本であった。

その後スマイルアス株式会社は実態の伴わない「業務提携」、「新規事業への取り組み」などIRのリリースを乱発。
その度に低位株狙いの投機筋が敏感に反応して、株価は短期間で乱高下している。
表には現れないが、乗っ取りグループの株主がその度に売り抜けたり、空売りを実行したりしていることは想像に難くない。
乗っ取りの目的は「ハコもの扱い」であったことは疑いようがない。
 

4. まとめ

属性や素性の分からない株主を放置しておくことで、役員解任や乗っ取りなど会社の屋台骨を揺るがしかねない問題が生じることは十分に考えられます。企業経営(特に上場企業の)には株主のリスクという要素も想定した戦略が必要になります。最低でも「検索」「銀行・証券に相談」による情報収集を怠らず、それでも判断材料に不足すれば外部の調査機関に相談・依頼できる体制を常に整えておくことが肝要です。

 

株主の素性を調べるならトクチョーにご相談ください

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株主名簿公開に際して・・・・

①上位株主で素性が分からない法人がある

②大量保有する個人株主がどこの誰か分からない

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総合調査会社「株式会社トクチョー」にお気軽にご相談ください。

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