カスタマーハラスメント”カスハラ”から企業と社員を守る対策3局面

2022/06/15

カスタマーハラスメント-1

掲載日:2019/12/26 更新日:2022/6/15

モンスタークレーマーなど、商品やサービスの顧客 (カスタマー) が、企業の従業員等であるため相手が立場上強く出にくい状況を利用し、過度な攻撃や謝罪要求を行う「カスタマーハラスメント」(カスハラ) が増加しています。

2020年10月に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」において、企業における相談件数は、パワハラ (48.2%)、セクハラ (29.8%) に続いてカスハラ (19.5%) の順となり、近年顧客からの迷惑行為 (カスハラ) に悩む企業、労働者が増加している可能性があります。過去3年間の相談件数の推移では、カスハラ (顧客等からの著しい迷惑行為) のみ「件数が増加している」の割合 (3.8%) の方が「減少している」(2.2%) より高いという結果が出ています。
また、過去3年間に各ハラスメントの相談があった企業の内、カスハラ (顧客等からの著しい迷惑行為)に該当する事案があったとする企業の割合が92.7%と最も高く、過去3年間の該当件数の推移については、相談件数と同様、「件数が増加している」の割合の方が「減少している」より高いという結果が出ています。 (2022/6/15追記)

通常のクレームを超えて「カスハラ」になると、直接の被害を受けた従業員の中には強いストレスを感じて精神疾患になる人さえいますし、ネットやSNSでの拡散によって本来は被害者の側である企業の評判さえも傷ついてしまうことがあります。

接客の現場ではクレームや、カスハラをゼロにすることは困難です。だからこそ、自社の評判や従業員を守るためにも、企業はカスハラに対して現場任せではなく、対策をあらかじめ講じておくことが今や必須となっています。今回は「企業が行うべきカスハラ対策」に焦点を当ててまとめてみました。

 
1. 「カスタマーハラスメント」いわゆる「カスハラ」とは

SNSの普及もあって、近年は衝撃的なカスハラ場面を捉えた映像が拡散されることがしばしば起きています。小売店や飲食店など、主に接客を伴う業種を中心に、或いは自治体や公共機関等でも、利用者などからの過剰なクレームによって社員・職員等が土下座などをさせられ、暴力的な言葉を浴びせられる映像などを、皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。

もともとある程度サービスや商品に不満があって企業や店舗に対してそれを伝えることは「クレーム」として認識されていました。そしてクレームそれ自体はある意味、企業や店舗が自社の商品、サービスの欠点を知り、改善すべき点が明らかになる為の重要なポイントでもあったのです。

それが近年、クレームが高じた結果、行き過ぎたクレームは「カスハラ」として、広く社会に認識されるようになってきているのです。
 

1-1. 法律でも防止に踏み出したカスハラ

ハラスメントについて「労働施策総合推進法」いわゆるパワハラ防止法が2019年5月29日に成立した事はまだ記憶に新しいですが、これに基づき第20回労働政策審議会 (雇用環境・均等分科会 (旧雇用均等分科会) ) で2019年10月21日に示された指針案では、事業主が講ずべき必要な体制整備として、次のことが盛り込まれています。
 

事業主は、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関する労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、以下の取組を行うことが望ましい。
また、併せて、労働者が当該相談をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発することが望ましい。

・相談先(上司、職場内の担当者等)をあらかじめ定め、これを労働者に周知すること。
・上記の相談を受けた者が、相談に対しその内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。

「パワハラ防止法」と言われる同法ですが、「顧客等からの著しい迷惑行為」と具体的な定めをすることで、「カスハラ」についても防止に踏み出しているのです。
 

1-2. カスハラとは

厚労省はパワハラ防止法の関連資料の中でパワーハラスメントを以下の様に定義しています。

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです
 ① 優越的な関係を背景とした
 ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
 ③ 就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
 【適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません】

カスハラは行為者であるカスタマー (顧客) の「業務上」の行為ではありませんが②について「業務上」という言葉を除く、または「取引上」等と置き換えることで定義されると考えられます。

追記
企業や業界により、顧客等への対応方法・基準が異なることが想定される為、明確に定義をすることは出来ませんが、企業の現場においては以下のようなものがカスタマーハラスメントであると考えられています。
「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、等同社の就業環境が害されるもの」
※2022年2月 厚生労働省公表の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」より (2022/6/15追記)
 

1-3. カスハラのタイプ

ほんの些細な事からでも大きなトラブルに発展することがあるカスハラですが、2022年2月、厚生労働省公表の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、下記のような行為を「カスハラ」として取り扱っています。

「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例
 ・企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合
 ・要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係が無い場合

「要求を実現する為の手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例
(要求内容の妥当性に関わらず不相当とされる可能性が高いもの)
 ・身体的な攻撃(暴行、傷害)
 ・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)
 ・威圧的な態度
 ・土下座の要求
 ・継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動
 ・拘束的な行動(不退去、居眠り、監禁)
 ・差別的な行動
 ・性的な言動
 ・従業員個人への攻撃、要求
  (要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの)
 ・商品交換の要求
 ・金銭補償の要求
 ・謝罪の要求(土下座を除く)


※近年の実例として、コロナ禍でのマスク着用、消毒、窓開けに関する強い要望やマスクをしていない人への過度な注意の要望、顧客のマスクの着用拒否など、新型コロナウイルスに関連するトラブル事案も見られています。(2022/6/15情報更新)
 

1-4. 企業の判断基準

顧客等の行為への対応方法は一定レベルを超えた場合に、悪質であるとして毅然と対応している企業もあれば、顧客第一主義の中で「お客様が納得いくまで対応する」との基準を設けている企業もあります。
業種や業態、企業文化などの違いから、カスハラの判断基準は企業ごとに違いが出てくる可能性がある事から、各社であらかじめカスハラの判断基準を明確にしたうえで、企業内の考え方、対応方針を統一して現場と共有しておくことが重要です。
企業、業界において様々な判断基準がありますが、一つの尺度としては、①顧客等の要求内容に妥当性はあるか、②要求を実現する為の手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲であるかという観点で判断する事が考えられます。
なお、殴る・蹴るといった暴力行為は、直ちにカスハラに該当すると判断できることはもとより、犯罪に該当しうるものです。
また、カスハラとして取り扱うかどうかに関わらず、顧客等からの行為で従業員の就業環境が害され、就業に支障が生じるようであれば、企業として従業員からの相談に応じる、複数名で対応する等の措置が必要となります。(2022/6/15追記)
 

1-5. カスハラによる従業員の心身への影響

厚生労働省の労働者調査では、顧客等からの著しい迷惑行為を受けての心身への影響として、「怒りや不満、不安などを感じた」(67.6%)、「仕事に対する意欲が減退した」(46.2%) が高いという結果が出ています。
また、「何度も繰り返し経験した」労働者においては「眠れなくなった」(21.2%)、「通院したり服薬をした」(8.8%) の回答も見られ、深刻な影響も確認されています。(2022/6/15追記)
 

2. 企業が講じておくべきカスハラ対策

カスハラの被害に遭った結果、従業員が健康を損ねてしまうことや、辞めてしまったりすることは最悪の事態として考えられます。あるいは、会社そのものがインターネットやSNSで中傷する書込みがなされ風評被害をこうむる可能性も考えられます。会社は企業と従業員を守るために、どのような対策を講じておくべきでしょうか。

ここでは、「事前」、「発生時」、「事後」の3つの場面に分けて見ていきます。
 

2-1. 【局面1】事前に講じておくべき対策

自治体や公共機関も含めた接客機会の多い現場では、以前よりクレーム対応についてのガイドラインやマニュアル整備を進めているところもありました。
そこまで出来ていなくても、従業員教育に取組んでいる企業や店舗は少なくありません。

しかし近年の状況は、これに「過剰な要求を受けた場合」すなわち「カスハラが発生した場合」についての対応策を加えておく必要性が高まっています。クレーム同様、従業員や現場の管理者が整理された知識と心構えがあるとカスハラに発展するトラブルを未然に防止する可能性が高まり、あるいは発生しても、被害を大きくせずに済む可能性が高くなります。

 
2-1-1. 自社事業で生じがちなカスハラ典型例の把握

カスハラのタイプは前章 1-3.カスハラのタイプでも挙げたように、業種業態によって起こりやすい典型例は異なります。
まずは、カスハラでなくても過去に自社で起きたクレームの記録を振り返ったり、業界団体等あれば情報共有してもらうなどして、自社の商品・サービスで起こりがちなカスハラの典型例を把握します。
特に自社の事業についての具体的なイメージが描けるほうが対策を練るにも役立ちます。

 
2-1-2. カスハラ発生時に備えた基本的な対応方針=ガイドラインの作成

自社の店舗や窓口で起こりうるカスハラのイメージが把握されたら、対応方針を作成します。
現場での対応、一定のラインでの現場責任者での対応、対応専任部署での対応などを設定します。
前述のような広く共通するガイドラインも公表されていますのでそれらを参考にしながら、自社の組織にあった(例えば、顧客がエスカレートした場合にどの部署のどの役職者が対応するのかも具体的に織り込んだ)ものとしておきます。

一般のクレーム同様、「カスハラ」もまずは発生させないことが肝心であり、発生の防止には通常のクレームの発生防止策をより徹底することが求められます。
しかし、カスハラは発生当初からその異常性が明らかな場合もありますが、初期の段階では正当なクレームと区別がつかない場合もあります。通常のクレームではなく「カスハラ」であると判断する基準を明記しておけば、一般のクレーム対応であるか、カスハラ対応であるかの判断が容易になります。

既にクレーム対応のガイドラインを作成してあるのであれば、それに「過剰な要求を伴う場合」=「カスハラの場合」としての対応を付記することになります。
一定以上の過剰な要求には、無理に担当者だけで対応しようとせず、組織的な対応を図ることも重要です。通常のクレームを超える「カスハラ」に対しては会社として対応することを明記し、本社の専門部署等で後日対応することなどの手順を決め、現場でもそれに委ねることが可能であることを周知しておくことで、担当者、現場管理者等の自己犠牲的な対応を回避できる確度が高くなります。

 
2-1-3. 研修等による周知徹底

カスハラについての自社のガイドラインを作成したら、社員に周知徹底します。
現場担当はもちろん、ラインにある現場管理者、専門担当部署、役員等の経営陣も、自社が顧客のクレームをどのように受け止めるかを再確認しながら、過剰な要求を伴う「カスハラ」から社員や組織をどのように守っていくのかという視点からも共有・再確認します。

特に現場については、業務研修などの際に模擬訓練を行う等の機会を通じて、万が一カスハラが発生した現場での冷静な対応ができるよう普段から備えておきましょう。

 
2-2. 【局面2】発生時の対応
カスタマーハラスメント-2

どれだけ注意を払っていても、ほんの些細なことがきっかけで発生しうるカスハラ。発生してしまった際の対応にはその場に応じた柔軟性も必要ですが、当事者となった従業員やその管理者・同僚が心得ておくとよい対応方法について、ご紹介しておきます。

 

2-2-1. 直面している従業員

顧客と接点を持つ全ての従業員がカスハラの当事者となりうる可能性があります。
業種業態、発生のきっかけにもよって異なりますが、直面した従業員は以下の対応を心掛けましょう。 

1.きっかけが自分・自社の落ち度であれば、素直に謝罪する
2.感情的にならずに冷静に対応する
3.話をさえぎらずに聞き、反論はしない
4.無理にその場で解決せず、折り返しの連絡とさせてもらう
5.折り返しの連絡先と合わせ、先方の主張・経緯などのメモを取る

金銭目的等の意図的なものでなければ、適切な対応を通じて「カスハラ」に発展せずに解決する可能性も十分にあります。
また、意図的なものであればなおさら現場での解決には限界がありますので、自社のガイドラインに従って、日を改めて顧客担当者等から連絡する旨を伝え、間を置く必要があります。さらに防犯カメラ等の装置などが設置されている場所あれば、カメラに写りやすい場所で話をするなどの工夫も必要です。

 
2-2-2. 管理者・同僚

訪問営業などでなければ、顧客と接する場所には複数の従業員がいる場合が多く、規模によっては管理者がいる場合もあります。カスハラの発生時、管理者や他の従業員はどのように対応すればよいでしょうか。これもケースバイケースですが、以下のような観点からガイドラインを作成しておくことをお薦めします。 

1. 慌てて飛び込まず、状況を見定める
2. 当事者以上に、ガイドラインに沿った冷静な対応を心掛ける
3. 担当者の経験値などに応じてタイミングを見て引き取る事も必要
4. 数で威圧しているような印象を与えないよう注意をはらう

しばしば、割って入った管理者や同僚も感情的になってしまう場合があるようです。
カスハラ対策は冷静さが肝心ですので、管理者や同僚は直接の当事者でない強みを最大限に活かしながらの対応に徹してください。

 
2-3. 【局面3】事後の対応

最後に、残念ながらカスハラ被害が発生してしまった場合、特に現場での対応で収まらずに本部等の専門の担当部署に迄至った場合の対応についてまとめておきます。

 
2-3-1. 事実確認、情報収集と再発防止

カスハラは基本的にはセクハラやマタハラ、パワハラに通じるハラスメントであり、男女雇用機会均等法やパワハラ防止法から求められている事業主の対応に則り対応しましょう。 そのためにはパワハラ防止法等に定める必要な体制整備を行なった上で、再発防止に務めることになります。

【パワハラ防止法による被害を受けた労働者へのケアや再発防止】
 ①事実関係の迅速かつ正確な確認
 ②事実関係に基づく被害者に対する適正な配慮措置
 ③事実関係に基づく行為者に対する適正な配慮措置
 ④再発防止に向けた措置

 

2-3-2. カスハラ加害者を含む外部への対応

カスハラは加害者が外部であるため、加害者への対応は、社内でのハラスメントと異なり社内指示や処分ではなく、申し入れや法的な措置となることが一般的です。
また場合によっては加害者との間での対応のみにとどまらず、発生したカスハラの概要や自社のカスハラへの断固たる姿勢等を対外的に発信することも検討する必要があります。

追記
2022年2月、厚生労働省公表の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に「カスタマーハラスメント対策の基本的な枠組み」が明記されました。

(カスハラを想定した事前の準備)
① 事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
・組織のトップが、カスハラ対策への取組の基本方針・基本姿勢を明確に示す。
・カスハラから、組織として従業員を守るという基本方針・基本姿勢、従業員の対応の在り方を従業員に周知・啓発し、教育する。
② 従業員(被害者)の為の相談対応体制の整備
・カスハラを受けた従業員が相談できるよう相談対応者を決めておく、または相談窓口を設置し、従業員に広く周知する。
・相談対応者が相談の内容や状況に応じ適切に対応できるようにする。
③ 対応方法、手順の策定
・カスハラ行為への対応体制、方法等をあらかじめ決めておく。
④ 社内対応ルールの従業員等への教育・研修
・顧客等からの迷惑行為、悪質なクレームへの社内における具体的な対応について、従業員を教育する。

(カスハラが実際に起こった際の対応)

⑤ 事実関係の正確な確認と事案への対応
・カスハラに該当するか否かを判断する為、顧客、従業員等からの情報を基に、その行為が事実であるかを確かな証拠・証言に基づいて確認する。
・確認した事実に基づき、商品に瑕疵がある、またはサービスに過失がある場合は謝罪し、商品の交換・返金に応じる。瑕疵や過失が無い場合は要求等に応じない。
⑥ 従業員への配慮の措置
・被害を受けた従業員に対する配慮の措置を適正に行う(繰り返される不相当な行為には一人で対応させず、複数名で、あるいは組織的に対応する。メンタルヘルス不調への対応等)。
⑦ 再発防止のための取組
・同様の問題が発生することを防ぐ(再発防止の措置)のため、定期的な取組の見直しや改善を行い、継続的に取組を行う。
⑧ ①~⑦までの措置と併せて講ずべき措置
・相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、従業員に周知する。
・相談したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、従業員に周知する。
(2022/6/15追記)
 

豆知識

企業及び事業主として適切な対応をしていない場合、被害を受けた従業員から責任を追及される可能性があります。
以下の事例は、保護者による教員に対する理不尽な言動があった際に、当該教諭の管理監督者である校長に損害賠償責任が追及された事例です。

裁判例① カスハラに対して不適切な対応を取ったことで賠償責任が認められた事例
             (一般企業事例に類似するもの)

市立小学校の教諭が児童の保護者から理不尽な言動を受けたことに対し、校長が教諭の言動を一方的に非難し、また、事実関係を冷静に判断して的確に対応することなく、その勢いに押され、専らその場を穏便に収める為に安易に当該教諭に対して保護者に謝罪するよう求めたことについて、不法行為と判断し、小学校を設置するA市及び教員の給与を支払うB県は損害賠償責任を負うと判断されました。

(甲府地裁2018年11月13日より要約)
 

一方、企業としてカスハラ対策を十分に講じていたことで、安全配慮義務の責任を免れた事例もあります。

裁判例② 顧客トラブルへの対応を十分に行っていたことで賠償責任が認められなかった事例
買い物客とトラブルになった小売店の従業員が、会社に対し、労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働する事が出来るよう必要な配慮を欠いたとして、損害賠償請求を求めました。 それに対し、被告会社は、誤解に基づく申し出や苦情を述べる顧客への対応について、入社時にテキストを配布して苦情を申し出る顧客への初期対応を指導し、サポートデスクや近隣店舗のマナージャー等に連絡が出来るようにして、深夜においても店舗を2名体制にしていたことで、店員が接客においてトラブルが生じた場合の相談体制が十分整えられていたとし、被告会社の安全配慮義務違反は否定されました。

(東京地裁2018年11月2日より要約)
 

このように、判例を通しても、企業、組織にとってカスハラに対して十分な対応を取ることの重要性が理解されます。(2022/6/15追記)

 
3. まとめ

顧客からの適切なクレームは自社の商品やサービスについて、気付いていなかった欠点を知る重要な情報であり、その欠点で迷惑を掛けたり、不快な思いをさせた顧客に謝罪したり、生じた損失について補償するのは事業者として当然のことです。心理的負担を乗り越えて伝えてくれた顧客には感謝すべきとさえも言えます。

一方で、正当なクレームの範囲を超えて過剰な要求によって、当事者となった従業員に多大なストレスを与えたり、企業そのもののブランドさえも傷つけてしまうのが「カスハラ」です。カスハラは社会の変化を背景に増加傾向にあり、無視できないものとなってきています。(2022/6/15追記)

カスハラ対策に積極的に取り組む企業には、複数のメリットが確認されております。業務において経験が蓄積されることで迷惑行為への対応がスムーズになったといったものや、迷惑行為をする顧客等が来なくなった、従業員が明るくなったといったものも見られます。
今や、顧客との接点を持つ企業は、自社と従業員を守るための「カスハラ対策」を避けて通れなくなっています。事前の対策、万が一発生した時の対策、事後の対策をあらかじめ想定し、自社なりのガイドラインを定めるなど、是非この機会に備えを進めてください。 

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