意味、方法から実践まで!出資やM&Aの為のデューデリジェンスとは

「デューデリジェンス」は、投資やM&Aを仕事としている人にはおなじみの言葉ですが、それ以外の方には聞きなれない言葉ですね。しかし、M&Aがリーマン以前の水準に回復し、一般の企業も余剰資金をファンド化するようになった今、「デューデリ」も身近なものになりつつあるのではないでしょうか。

百聞は一見に如かずというように、一度経験した方ならなんとなく流れも内容も分かる一方、案件内容が千差万別であるように、デューデリの実施範囲もやり方も様々です。デューデリが全く初めての方にも、経験的にはある程度ご存知の方にも、デューデリについての知識の確認・整理をしていただけるように、意味、方法とその実践的な進め方についてまとめてみました。

1. デューデリジェンスとは

1-1. デューデリジェンスの意味

デューデリジェンス。見るからに難しそうな言葉ですが、実は英語の「Due(当然)」と「Delligence(義務)」の組み合わせのとおり、言葉の意味そのものは、「当然の義務」「やるべきこと」といった意味で、それを略したものが「デューデリ」です。この記事でも以下の文中では「デューデリジェンス」のことを「デューデリ」と略します。

さて、「当然の義務」「やるべきこと」とは?という感じがしますが、実際には「デューデリ」は投資やM&Aの際の、対象についての内容・リスクなどの精査のことを意味します。

投資やM&Aの案件でこの言葉が良く使われるわけですが、大きなお金を動かすこれらの案件で、対象先をよく調べることはある意味「当然のこと」ですから、そう考えれば「デューデリ」=「当然の義務」というのもうなずけるのではないでしょうか。

1-2. なぜ必要なのか?

前項でも述べましたが、デューデリは、大きなお金が動くことになる投資やM&Aの際に行われます。それにしてもなぜ、お互いに合意して行う取引なのに、このような精査が必要なのでしょうか。

デューデリの最大の目的は、情報の非対称性とも呼ばれる、投資であれば資金の出し手と受け手、M&Aであれば事業の売り手と買い手の間の情報量の不均衡、格差を是正することです。

取引では、出し手や買う側の期待値や想定と、受け手、売る側の意思表示の意味が異なる事は往々にし起こりえます。買い手側の「こんなはずじゃなかった」や、売り手側の「説明したでしょう?」的な齟齬をなくし、株主など双方の利害関係者への説明責任を果たすためにも、対象先をよく調べる、あるいは必要な開示を行うという手続きがそれぞれの権利であると同時に義務として必要であり、それが「デューデリ」という手続きとして行われるのです。

1-3. 実施期間と費用

出資やM&Aの判断に非常に重要なデューデリですが、一方で時間的な制約があったり、制約がなくてもいたずらに時間をかけることは双方の負担ともなりますので、対象先の規模や事業の構成にもよりますが、通常は1か月から2か月程度、実際に対象先の現地には、序盤と終盤に集中的に数日間ずつ、というのが一般的なようです。

費用面では、外部の専門家は時間チャージが多く、やはり対象先の規模・構成や内製と外注、専門家間の分担などでも異なりますが、一つの項目に30万円から300万円程度、デューデリ全体で150万から500万円程度が多いようです。

2. デューデリジェンスの方法

1章で述べたように、出資やM&Aの差異の相互確認的な精査として行われるデューデリでは、資金の出し手/受け手あるいは事業等の買い手/売り手の業況や事情により実施内容は本当に千差万別なのですが、一方で時間や労力の制約等から、ある程度の型、ポイントがあります。

以下で、基本的なデューデリの実施方法について確認しておきましょう。

2-1. 内製と外部委託

デューデリを進めるには、まず、誰が行うか、がひとつ目のポイントとなります。基本的には①全部自社で行う(内製)、②外部委託する、③部分的に外部委託する(分担する)場合があります。自社で行う場合にも人件費や交通費という形で費用が発生しますが、外部委託の場合には特に大きな費用が発生しますので、案件の大きさや必要性を吟味して決定することになります。

①内製する:投資やM&Aを行う企業に、専門家・有資格者をはじめとしたリソースが豊富な場合、社内のそれらの社内の専門家等が全てのデューデリを行う場合があります。

②外部委託:逆に人材その他に不足や制約がある場合、案件が複雑であったり、関係者が多い場合などで公平性や説明責任が特に重視される場合などには、外部の専門家に委託する、いわゆる外注が行われる場合が多いようです。

③分担する:よく行われる形態のひとつに、一部のデューデリを自社内で行い、財務や法務といった「専門性の高い」部分だけを外部に委託して、内外で分担する形もよく見られます。

2-2. 基本的な項目

「誰が行うか」と密接に関係するのが、「何を調べるか」(=デューデリの実施項目)になります。以下に大小あわせて10項目を挙げましたが、案件の規模や対象先の内容によって、財務と税務と年金についての精査がまとめて行われたり、法務と知財についての精査がまとめて行われたりといった形で行われることがあったり、特定の項目が必要無い場合もありますので、実情に照らして加減してください。

また、「進め方」の項目でも述べますが、各項目の個別のデューデリに加え、関係者間での情報共有、意見交換を行うことによって、見えていなかった点が見えてくることなどもありますので、個別項目が単独で完結するものではないことも是非覚えて於いてください。

<デューデリジェンスの全体イメージ>
デューデリ項目
  

2-2-1. 事業デューデリジェンス

ビジネスデューデリとも言い、対象先のビジネスモデルや環境、将来性などを精査します。外部のオープンデータ、対象先からの開示資料の分析に加え、不明点などについてはマネジメントインタビューなども行います。

<主な調査事項>
・外部環境:対象市場の規模・動向、競合・協力企業等、優位性・リスク等
・内部状況:事業モデル・商品やサービス、体制・人、方針・計画・戦略・施策案、業績推移や見通し、など

<ポイント>                   ⇔       <失敗要因>
・投資や買収の目的、自社の戦略との整合性  ↔    案件そのものが目的に
・将来価値の具体的な根拠を明確にする     ↔     対象先/自社の価値が低下
・リスクの把握や見極めを行う            ↔     結論ありき等で見落としリスク顕在化

2-2-2. 財務デューデリジェンス

デューデリといえば、この財務デューデリのことと思っている人も少なくないようです。開示された決算等に現れた数年分の、財務数値の良しあしといった内容分析と、決算にまとまるプロセスや個別項目の処理・判断の妥当性を確認し、そもそも業績や現況を正しく表しているかどうかを確認します。多くの場合、財務や経理の責任者、担当者にもインタビューします。

<主な調査事項>

・過去の財務数値:損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書や補助資料について、3年分(またはそれ以上)の確認がされることが多い
・財務リスク:含み損、簿外債務、偶発債務の有無や発生リスク

<ポイント>     ⇔   <失敗要因>
・財務数値の妥当性  ↔  粉飾、不適切、矛盾、特殊な処理などが内在
・資産評価の妥当性  ↔  資産の過大評価/追加投資需要の見落し/評価が不適切
・潜在リスクの有無  ↔  リスクが見落とされていた/評価が不適切

2-2-3. 法務デューデリジェンス

財務デューデリと並んで重要なのが、法務デューデリです。大企業であれば社内弁護士を有していることも少なくありませんが、公平性や中立性・客観性の観点やノウハウの蓄積などから、外部の法律事務所に委託するケースが多いようです。

<主な調査事項>
・組織・人事労務:雇用契約や労務管理、コンプライアンスなど(人事デューデリに委ねることもある)
・訴訟:現在係争中のものを含め過去の訴訟の背景や、将来の訴訟リスク
・契約:主要な契約における偶発債務リスクや不利益条件など
・特許・許認可:事業の維持に必要な特許や許認可の権利関係の精査
・法制度/規制:根拠法や監督官庁による規制・自治体による条例などの制約と遵守状況など

<ポイント>          ⇔   <失敗要因>
・事業の法的根拠や特許等    ↔  要件充足が不十分でペナルティーの発生リスク
・契約条件が不利でないか    ↔  コベナンツ等の抵触のリスクの見落とし等
・訴訟リスクを内包していないか ↔  顕在化時にレピュテーション(風評・評判)リスクや財務リスク

2-2-4. 人事デューデリジェンス

人事デューデリでは、対象先の人事制度や人件費、部門構成とキーパーソン、採用や退職・離職の状況などを確認します。またコンプライアンスや労使関係において、顕在、潜在の問題点がないかも確認します。さらに、統合等を前提としている場合には、組織風土や業務の進め方、従業員の価値観なども調査します。特に潜在的なコンプライアンスや労使関係の問題は、ディール後に顕在化した場合、出し手/買い手にまで影響が及ぶことがありますので、慎重に精査します。

<主な調査事項>
・人事制度:制度、体制とそれに基づく人件費の推移予測などを確認
・人材面:体制やキーバーソン、採用や退職・離職の状況や労使関係
・風土/規範:コンプライアンスや風土、価値観など

<ポイント>             ⇔    <失敗要因>
・「ディールブレーカー」の存在の有無 ↔  出資受け入れや統合に賛成しないキーパーソンの
                                                           離脱や労組の反対等による案件の頓挫
・制度や体制と人件費の将来像     ↔  昇給等の制度や採用費による想定外のコスト
・組織風土の違い           ↔  重大なコンプライアンス違反によるレピュテーションリスクや
                                                          予定した統合・協力関係(シナジー)のロス

2-3. その他のデューデリジェンス項目

上記に、デューデリの基礎項目とも言うべき4つの項目を挙げましたが、そのほかにも、以下のような項目についてデューデリを行う場合が有ります。

またそれぞれの項目が、独立したひとつのデューデリ項目として行われずに、上記の4項目の中の一部として行われることもあります。どの程度まで行われるかは、対象事業の内容や業界の特性などにもよりますので、実際の案件に即して検討してください。

2-3-1. 知財デューデリジェンス

事業の形態によっては、商品や事業の優位性が知的資産(知的所有権、知的財産、知的資産)等によって支えられ、事業の競争力の源泉となっている場合があります。知財の価値を評価して行う財務的な意味の強い精査と、技術的な環境や進歩の中での位置づけ、関連する技術等との位置づけを精査する面とがあり、弁理士を含めた専門コンサルタントに依頼する場合が多いようです。
現在の事業や商品・サービスにおいて必要なライセンス等が適切に取得されているかや、知財が特許・登録等により守られているかは、予想外のコスト負担や競争力の喪失につながるため、知財デューデリの重要性も、特にリスク管理の観点から高くなっています。

2-3-2. ITデューデリジェンス

投資額の面でも、事業を支えるインフラとしても、IT関連システムの重要性は大きくなっています。現状のシステムの構成や運用方法はもちろん、将来のメンテナンス・更新時期とそれぞれ費用や、事業やその戦略の将来像に合わせた変更などの制約・費用などについても精査を行います。仕様書等の資料や実際の機器、運営状況の確認に加え、IT部門の責任者などへのインタビューも行います。
また最近では情報に関する不正や漏洩被害等の増加や、コンプライアンス上の重要性の高まりから、構成や運用での安全性の確保、関連する規定やルールの内容や実情なども確認します。
また、事業的な統合や協調を前提としている場合は、出し手/買い手側のシステムとの親和性、目的とする統合/協調に必要なコストの想定などもこの機会に確認することになります。
加えて、特に2011年の震災以降はBCP(事業継続計画)やDRP(災害復旧計画)の観点からも確認が行われるようになりました。

2-3-3. 不動産デューデリジェンス

不動産デューデリでは、対象先が保有し、貸借対照表に計上されている不動産について行う精査です。
サービス業などで自社不動産の保有が少ない場合などをはじめ、財務デューデリの一部として行われる場合もあります。
不動産は市場性の面や、都市計画法・建築基準法・消防法といった法制度上の制約、耐震性やメンテナンス状況などといった物理的な状況で資産価値が大きく変動するため、法的な充足状況と、計上されている価額と実勢価格の乖離などの財務面で精査を合わせて行います。
また後述する環境リスクとあわせての地歴や、前述の法務デューデリの一環としての登記関係の確認なども行われます。

2-3-4. 税務デューデリジェンス

税務デューデリでは、対象先の過年度の税務申告の適正性やリスクを確認するとともに、証券化など「スキーム」といわれる投資や買収形態をとる際には、投資/M&Aの実行に伴い発生する税金等についてもその将来の負担額の見積もりが適正であるか、対象先が減免などの特殊な税制の適用を受けていないか、外国の税制などによっていないか、そしてそれが案件実行後にも継続して適用できるかなどを確認します。

2-3-5. 年金デューデリジェンス

年金デューデリとは、主に退職給付制度についての精査を言います。従業員の将来の退職給付に備えた引当金の計上額について、適正に算出、引き当てられているかを確認します。財務デューデリや人事デューデリの一部として行われることが一般的ですが、対象先が大企業である場合などには、金額も大きくなるため、個別の項目として取り扱う場合もあります。

2-3-6. 環境デューデリジェンス

環境デューデリとは、近年の企業経営における環境問題への意識の高まり、環境規制の強化による事業への制約の強まりなどを受けて行われるようになったものです。身近な例では、日本では2003年から施行された土壌汚染対策法により、環境問題のデューデリが注目されるようになりました。
前述の土壌汚染に加え、地下水や海洋への排水、石綿やPCBといった発がん性物質、温室ガス管理などと、それに伴う労働衛生問題など、事業形態や立地により多岐にわたります。特に環境問題ではOECD加盟国を中心に、日本にも「汚染者負担の原則」が在りますので、対象先がそのような要因となっている場合、原状回復費用等に莫大なコスト負担が生じる場合があるので、注意が必要です。

2-4. 外部専門家起用の例

では、第2章の2項や3項のようなデューデリ項目は、実際にどのように分担されるのでしょうか。あくまで目安ですが、一般に使われる例を表にまとめてみましたので、自社のリソースと案件の重要性や予算とあわせて検討してみてください。

<自社・外部専門家の分担例>  professional

※アレンジ:買い手などデューデリの実施主体の委託を受けて全体をコーディネートする業務。
アレンジャー業務とも言います。

3. デューデリジェンスの進め方

3-1. 投資/M&Aの全体プロセスとデューデリジェンス

大きな資金が必要となる投資やM&Aでは、本来はキチンとした事前の準備、デューデリ、実行とその後の仕上げといったプロセスを一つ一つ行うことが重要です。現実のビジネスシーンでは競争や借り入れの弁済期限、期末までのスケジュールといった主に時間的な制約があり、それが「M&Aの成功率はたったの4割弱」ともいわれる大きな要因となっているようです。実際にそのような制約があることの方が多いと思いますが、下図で基本的なプロセスを確認し、どの部分をどのように短縮しながら進めるのかを認識し、可能な限りの代替策や補完を図ることで、失敗のリスクを軽減することができます。
※本記事ではデロイトトーマツコンサルティング社「M&A経験企業に見るM&A実態調査(2013年)」において「成功」が36%となっている事などに拠っています。

<図:投資やM&Aの際の基本プロセスの中のデューデリジェンス>
  in_process

3-2. デューデリジェンスの進め方

さて、実際に投資案件、M&A案件が発生し、デューデリを行う必要に面した場合、闇雲に資料請求を行ったり、仲介業者や外部専門家に任せるんのではなく、まず社内のリソース(経験者や専門家・有資格者)の有無や可用性(アベイラビリティー:時間をどの程度割り当てることができるか)を確認します。そのうえで、自社で行う範囲、外部の専門家の起用とその役割分担を想定したうえで、委託先を選定し、チームアップ、実行に移ります。

<図:デューデリジェンスの進め方>
  プロセス
※アレンジ:デューデリの実施主体(買い手など)の委託を受けて行う全体のコーディネート業務のこと。アレンジャー業務などとも言います。

4. まとめ

今回、「デューデリジェンス」の意味と必要性、基本的な方法、進め方についてまとめてみましたが、デューデリの全体像について理解いただけたでしょうか。
初めての方にはとっつきにくく、一度経験すればなんとなくわかったような気になるけれど、やはり本当に分かったのかどうかも自信の持てないデューデリですが、本来の趣旨と基本的な全体像を押さえた後は、社内チームと外部専門家で協力しながら、個別案件の事情に合わせて柔軟かつ慎重に進めていくしかありません。今回の記事を参考に、ぜひ「良い」デューデリを実現させて、投資やM&Aを成功させてください。

<デューデリとは>「Due」(当然)の「Delligence」(行い、義務)として投資やM&Aに際して、出し手受け手或いは買い手売り手の情報の非対称性からの誤解を解消し、双方の的確な意思決定と関係者への説明責任に備えるための、投資/買収先の精査のこと

<その方法は>自社あるいは専門家の起用により、事業・財務・法務・人事その他の項目について、開示資料やオープンデータ、ヒアリングをもとに精査を行う

<進め方>投資の出し手やM&Aの必要性を十分に確認したうえで、社内の人間が行うこと、外部の専門家に任せることを切り分け、開示契約や基本合意のもとにデューデリを実施し、その結果をもとに最終的な交渉や実施の可否そのものの判断を行い、実行或いは棄却を行います。

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