リスク回避から積極活用まで!取引に必須の不動産登記の見方【保存版】

 もし皆さんが、不動産の売買を行うとしたら、問題のある物件ではないか?」「詐欺ではないか?」「本当に大丈夫だろうか?と心配になることがあるのではないでしょうか。個人で取引をする場合も、法人として取引をする場合も、安心して取引を行いたいものです。
 ビジネスの場合だと、不動産の売買だけでなく新規で取引を開始する場合には「信用できる会社だろうか?」と心配になるでしょう。その時、取引する相手である企業や個人の、不動産という資産の状況を確認できたら安心して取引できますね。

 新規取引、既存取引先の与信の見直し、そして個々の不動産の売り買い等をするにあたっては、相手方の所有不動産の不動産登記を取得し、その先に踏み込んで所有者の状況、権利関係の状況を見て問題があるかどうかを判断します。このように取引先の信用を調査する場合には、「不動産登記」は「商業法人登記」と対を成すものです。「不動産登記」は、資産状況を知る上でキホンの“キ”と言えます。

 不動産登記の情報は法務局におもむいて証明書を交付してもらう方法のほかに、インターネットから誰でも取得できます。不動産登記は、数百円といった低いコストながら「資産状況を把握できる宝庫」と言っても言い過ぎではありません。しかし、「宝庫」と言っても、見方・読み方がわからなければ「宝の持ち腐れ」になってしまいます。
 大きな金額となることが多い不動産取引において、安全な取引を行うために、万が一の「危険な兆候」を察知するには、不動産登記の構成、権利関係における重要な用語を正しく理解しておくことが求められます。
この記事では、プロ調査員の見方を踏まえながら、「不動産登記の読み方」を解説したいと思います。

1.不動産登記の概要、情報の取得方法

 不動産登記は、前述のように取引する不動産について、または取引する相手の保有する不動産について調査する時に使用する基本的なツールです。
 ここでは、不動産登記とはどのようなものか、わかりやすく解説します。

実務的な側面から
 企業調査であれば、実務的には「商業法人登記」に記載されている「①本店所在地」および「②代表取締役の住所」の不動産登記を取得します。
 これら「商業法人登記」に記載されている不動産情報は様々で、小さな会社であれば本店所在地と代表取締役の住所が同一のケース、また、会社のホームページで公開している本店所在地とは異なる本店所在地を登記しているケース、さらには移転・転居によって変遷が登記されているケース等々があります。

1-1 不動産登記とは何か?

 「不動産登記」とは、“土地・建物の所在・面積のほか、所有者の住所・氏名、権利関係を公開する仕組み”といえます。土地と建物は、それぞれ独立した登記となり、登記事項も若干異なります。
 「不動産登記」は、法務省の地方機関である法務局が登記事務を行い、公的な不動産情報を公開している制度であり、「商業法人登記」と同様に国による情報提供と思ってください。
 冒頭でも触れたとおり、1つでも所有している不動産があるならば、その先に踏み込んで所有者の状況、権利関係の状況を見ていかなければなりません。その中に、「危険な兆候」を察知できるヒントが隠されています

1-2 登記が必要な理由

 そもそも、なぜ「不動産登記」をする必要があるのでしょうか。不動産登記は、土地の所有者が登記をします。土地所有者(登記する人)の立場からみて、2つの理由があります。

  • 理由① 安心した取引
    商取引の時に相手を安心させるために登記します。逆に相手にとっては国による公開情報は信頼できるものであるため、“一定の信頼”を置くことができます。

~例えば~
 A社の所有している土地や建物を買う場合、または同物件に抵当権を設定する場合、本当にその土地や建物がA社のものか、または、他の会社もしくは他の個人の抵当権が設定されていないのかを確認することが必要になります。
 そのようなとき、A社に確認するだけでは不完全であり、信頼できる国家機関である法務局を通じて「不動産登記」を確認すれば安心して取引ができます。
 つまり、土地所有者にとって「登記」とは、正規の手続きを踏んで“国のお墨付き”をもらったも同然の行為であり、取引の相手を安心させることができます。登記を見ることができる相手にとっては、内容を確認することによって疑心暗鬼にならず、安心して取引できます。

~厳密に言えば~ “全幅の信頼”ではなく“一定の信頼”
「理由①:安心した取引」で“一定の信頼”としたのは、不動産登記には「公信力がない」からです。公信力とは、登記上の表示を信頼して不動産の取引をした者は、たとえ登記の内容が異なっていても、保護されるということです。逆に言えば、もし不動産登記に公信力があれば「いかなる場合でも保護され」ます。

  • 理由② 権利の主張
    第三者に権利の存在を主張できる(主張する)ために登記します。簡単に言えば、先に「不動産登記」をした人が所有権を持っている、ということです。

~例えば~
 Aが、所有する家をBとCに2重に譲渡した場合、Cが“先に”所有権移転登記をすると、たとえBが既に代金を支払い、その家に引っ越していたとしても、その家の所有権はCにあります。Bは、その家の所有権をCに主張することはできません。Cは、登記によって所有権を確保したのです。

BはCよりも先に購入代金を支払っているのに可哀想、泣き寝入りなの?
 例で挙げたとおりの2重譲渡が発覚した場合、代金支払い済みのBは、所有権移転登記を済ませたCに裁判では勝てません。でも、Bにその気があれば、泣き寝入りにはなりません。Bは、そのやるせない矛先をAに向けて、2重譲渡の責任を問いただし損害賠償を請求することができます。

1-3 不動産登記の構成

 不動産登記は大きく分けると「表題部」「権利部」からなります。「表題部」は土地・建物の所在地構造などの外形情報、「権利部」は「甲区」「乙区」で構成され、「甲区」は所有権に関する情報、「乙区」は担保設定状況など所有権以外の情報が記載されています。
 詳しい読み方は第2章で解説します。ここでは、「表題部」と「権利部」があって、「権利部」は「甲区」と「乙区」にわかれていることだけがわかれば大丈夫です。

1-4 不動産登記の調べ方・取得方法

不動産登記を調べるには、幾つかの方法があります。

  1. 法務省が管轄する地方法務局、同支局、同出張所に出向き、登記事項証明書を請求する。
  2. 地方法務局、同支局、同出張所に郵送にて登記事項証明書を請求する。
  3. 地方法務局などから登記事務に関する委託を受けた一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」(https://www1.touki.or.jp/)に登録し、インターネットを使用して登記情報を取得する。

 上記のどの方法でも、1通につき1000円以下の金額で登記情報を得られます
下図は、登記情報提供サービスで得た不動産登記の一例です。登記情報サービスを利用すると、このような登記情報が自宅や会社にいながら数百円で得られます。

登記事項証明書と登記情報の違い
 登記事項証明書には登記事務を司る登記官の氏名が載り、発行した法務局の角印が捺され、法的な証明力があります。他方、インターネットによる登記情報には登記官の氏名や角印はなく、法的な証明にはなりません。法的な証明を必要とする例は、不動産の売買や賃貸借契約、裁判を起こすなどがあります。
 相手の会社に対して、訴訟を提起する場合は登記事項証明書が必須となりますが、単に相手を調べるだけならば、「3.登記情報提供サービス」で充分です。登記官の氏名や角印以外は、同一の内容が登記情報に載っています。
 つまり、余程のことがないかぎり普段は必要ないと思いますので、法務局に行く時間のない人、費用を削減したい人などは、「登記情報提供サービス」の利用を推奨します。

2.不動産登記のプロ的読み方

 不動産は、会社であれば設備資金や運転資金融資の担保、個人であれば住宅ローンの担保に供されるものであり、「会社や個人の資産状況や信用度を推し量る材料」として不動産登記に記載されている情報は大きな意味を持ちます。例えば、差押があれば資金繰りがひっ迫している、また、抵当権者、根抵当権者などの素性が悪ければ、将来的に金銭トラブルが起きる可能性を秘めています。
 本項では、基本的な用語説明に始まり、不動産登記の状況から読み取れる経済の実態、危険な兆候の察知に力点を置いて解説していきます。

~ちなみに~
 記載されている中で“下線”が引かれている部分があります。これは、その内容が「抹消」されていることを表しています。“下線”が引かれた部分は古い内容で、新しい内容に変更されている、ということです。

2-1 表題部

 表題部には物件を特定するためと、物件の客観的状態がわかるように外形情報が記載されます。

2-1-1 土地の場合の表題部

ⅰ 所在とは

 土地の所在とは、行政区域を基準として郡・市・区・町・村・字、またはこれに準じる地域として表示されるものです。平たく言えば、該当エリアです。

ⅱ 地番とは

 1筆の土地ごとに付けられた識別番号です。上記の例では、所在と合わせて“港区東青山七丁目24番5”となります。地番は、土地の所在地や所有権などの権利の範囲を明らかにするためのものです。
 該当する地番が不明であると登記を取得することができないため、土地の登記を取得する際には、前もって法務局に当該住所に相当する地番を確認しておかなければなりません。

~「筆」とは~
 「筆」は、「ヒツ」「ピツ」と読みます。「筆」は土地の単位であり、1個の土地を1筆の土地と言います。1個の土地を複数に分割することを「分筆」(ブンピツ)といい、複数の土地を1個にまとめることを「合筆」(ゴウヒツ)といいます。

~所在と地番の違い~
 所在は該当エリア、地番は所在するエリアにおいて土地を特定するために必要なものです。所在と地番の関係についてのイメージ図は、下記のとおりです。

住所と地番の違い
 「住所」は、郵送物などを配達する宛先です。「地番」は主に登記事項証明書、もしくは登記情報の取得や税務書類などに使うために必要なものです。同じ場所を示すものですが、異なる番号がついていることがあります。
 元々は、住所には地番が使われていました。しかし、分筆や合筆が繰り返されると、順番に並んだりせず非常にわかりにくくなって、郵便配達などに悪影響をもたらし、生活するのに不便になってしまいました。そのため、特に都市部の市街地において、新たに「住所」が導入されました。住所は正確には「住居表示」といいます。

注意しなければならないのは、住居表示が実施されている区域では地番と住所が一致していないケースが多く、登記事項証明書、もしくは登記情報を取得の際には、法務局に住所に付けられている地番を確認しなければなりません。
例:(住所)東京都世田谷区北沢8丁目31番6
  (地番)東京都世田谷区北沢8丁目15番26

ⅲ 地目とは

 地目とは、土地の利用状況を示すものです。ただし、実際の利用状況と異なることもあります。主な地目は次のとおりです。

  1. 宅地
    建物が建てられるための土地、つまり建物の底地です。工場用地は宅地です。なお、建物は付随的なものに過ぎず、ほかの用途がメインとなっているものは雑種地となります。

  2. 農耕地で用水を利用して耕作する土地です。ただし、家庭菜園は農地とは言いません。

  3. 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地です。
  4. 山林
    耕作の方法によらないで竹木の生育する土地です。
ⅳ 地積とは

 地積とは、1筆の土地の面積です。

ⅴ 原因及びその日付とは

 原因及びその日付は、登記をする原因とそれが起きた年月日と言い換えられます。
原因は、分筆(1筆の土地を分割して数筆の土地にすること)、合筆(数筆の土地を合わせて1筆の土地にすること)、地目の変更、地積の変更など登記事項に変更が生じた場合に理由を付するものです。
 分筆、合筆の登記は、土地の筆界を人為的に引き直すだけであり、物理的な変更を伴わないため、原因は「○○番から分筆」、もしくは「○○番を合筆」とし、その日付は記載しません。一方、畑から宅地など地目の変更は、物理的な変更を伴うため、「平成7年9月5日地目変更」としその日付と原因を併記します。

ⅵ 〔登記の日付〕とは

 登記官が登記を完了した日です。登記を申請した日ではありません。

2-1-2 一戸建の建物の場合の表題部

ⅰ 所在とは

 建物の所在には、建物が建っている土地の地番が記載されます。2筆以上の複数の土地にまたがっている建物の所在を記載する場合、その全部の土地の地番を表示します。

ⅱ 家屋番号とは

 家屋番号とは、登記した建物を特定するために法務局がつけた番号です。1筆の土地に複数の建物が建っていることもあり、その建物と他の建物を区別するために家屋番号が必要となります。
 建物の登記を取得する場合は、前もって法務局に当該住所に相当する建物の家屋番号を確認しておかなければなりません。実戦的には、「登記情報提供サービス」の利用において、前もって法務局に土地の地番を確認した後、インターネットの画面で「土地からの建物検索指定」を選択して家屋番号を特定することができます。

詳しい解説:家屋番号が定められる基準
 家屋番号は、次の基準によって定めるものとされています。
  1. 1筆の土地の上に建物が1戸の場合、土地と同じ番号を定めます。例えば、土地の地番が「25番」であれば、家屋番号は「25番」になります。
  2. 1筆の土地の上に建物が複数戸ある場合、土地の地番に「1」、「2」などの支号を付けます。例えば、土地の地番が「25番1」であれば、家屋番号は「25番1の1」、「25番1の2」となります。
  3. 数筆の土地にまたがって建物が1戸建っている場合、建物の床面積の多い部分がかかっている土地と同じ番号になります。例えば、2筆の土地にまたがっている建物の場合、地番が「20番2」、「23番1」で、家屋番号が「23番1」ならば、床面積は「23番1」の土地に多くかかっていると判断できます。
  4. 数筆の土地にまたがって建物が複数戸建っている場合、「c」と同様に建物の床面積の多い部分がかかっている土地と同じ番号になります。例えば、2筆の土地の地番が「20番2」、「23番1」で、その上に建っている2戸の建物の家屋番号が「23番1の1」、「23番1の2」ならば、2戸の建物の床面積は、いずれも「23番1」の土地に多くかかっていると判断できます。

~調査員の独り言~
 上記「d」のケースにおいて、対象の人物が住んでいる建物を特定するには、「登記情報提供サービス」を利用した場合、電話にて法務局に対して「○○○○」氏の家の家屋番号を教えてほしいと聞いても、教えてくれることは滅多になく、管轄の法務局に出向くか、郵送請求してくださいと言われます。したがって、上記のように2戸や3戸程度の建物であれば、「登記情報提供サービス」にて、該当する建物のすべての登記を取得してしまった方が早いです。

ⅲ 種類とは

 建物の用途を示すもので、居宅、共同住宅、事務所、店舗、工場などがあります。

ⅳ 構造とは

 木造瓦葺2階建など、建物の主要な構成材料と屋根の種類、階数が記載されます。

ⅴ 床面積とは

 建物の広さ・大きさを表し、複数階ある場合、階ごとに表示されます。

ⅵ 原因及びその日付とは

 原因及びその日付は、登記をする原因とそれが起きた年月日と言い換えられます。建物の場合は、建物の表示登記が必要となった物理的原因とその発生年月日が記載されます。代表的な原因は新築であり、その日付は建物が完成した年月日です

ⅶ 〔登記の日付〕とは

 登記官が登記を完了した日です。登記を申請した日ではありません。

2-1-3 区分建物(マンション)の場合の表題部

 マンションには、賃貸型と分譲型がありますが、一般的に賃貸型では居住している区画(部屋)は独立して登記すべき対象にはなっていません。一方、分譲型では所有権を売買したり、抵当権などを設定したりすることもできます。このため、1つの区画(部屋)ごとに権利関係を明示する必要性があり、登記の対象となります。このような分譲型のマンションを法律的には区分所有建物、または区分建物と呼んでいます。
 区分建物(マンション)の場合の表題部は、建物全体についての表題部と、1つの区画についての表題部の、大きく2つに分かれています。さらに、「敷地権」についてそれぞれ表題部があり、上図のように全部で4つに分かれています。

2-1-3-1 表題部(一棟の建物の表示)

 「一棟の建物」とは、区分建物(マンション)の丸ごと全部のことです。

ⅰ 専有部分の家屋番号とは

 区分建物で独立して所有することができる部分(区画)を専有部分といいます。「専有部分の家屋番号」欄には、“建物全部”の専有部分の家屋番号が記載されます。マンションで言えば、すべての部屋の家屋番号が記載されます。

ⅱ 所在とは

 区分建物が建っている土地の所在と地番が記載されます。

ⅲ 建物の名称とは

 建物の名称です。マンションの場合、マンション名が記載されます。

ⅳ 構造とは

 1棟の建物の構造、階数が記載されます。

ⅴ 床面積とは

 1棟の建物の床面積が各階別に記載されます。

ⅵ 原因及びその日付とは

 余白となります。区分建物が新築された年月日は、表題部(専有部分の建物の表示)の「原因及びその日付」欄に記載されます。

ⅶ 〔登記の日付〕とは

 登記官が登記を完了した日です。登記を申請した日ではありません。

2-1-3-2 表題部(敷地権の目的である土地の表示)

 ここには、区分建物(マンション)が建っている土地について、「土地の場合の表題部」と同じ内容が記載されています。

ⅰ 土地の符号とは

 敷地権が及ぶ土地を特定するために付けられた便宜的な番号です。

ⅱ 所在及び地番とは

 区分建物(マンション)が建っている土地の所在と地番が記載されます。

ⅲ 地目とは

 地目とは、土地の利用状況を示すものです。ただし、実際の利用状況と異なることもあります。

ⅳ 地積とは

 地積とは、1筆の土地の面積です。

ⅴ 〔登記の日付〕とは

 登記官が登記を完了した日です。登記を申請した日ではありません。

2-1-3-3 表題部(専有部分の建物の表示)

 ここには、「専有部分の建物」について記載されています。簡単に言えば、マンションの「各部屋」について記載されている、ということです。

ⅰ 家屋番号とは

 該当する区画(部屋)の家屋番号が記載されます。

ⅱ 建物の名称とは

 部屋番号が記載されます。

ⅲ 種類とは

 専有部分の建物の用途を示すものです。

ⅳ 構造とは

 鉄筋コンクリート造など、建物の主要な構成材料と、階数が記載されます。専有部分(部屋)は大概、ワンフロアであるため、建物全体が7階建であっても、専有部分ということで1階建という表示になります。

ⅴ 床面積とは

 専有部分の部屋は何階なのか、そしてその部屋の床面積は何㎡あるのかが記載されます。

ⅵ 原因及びその日付とは

 原因及びその日付は、登記をする原因とそれが起きた年月日と言い換えられます。
 建物の場合は、建物の表示登記が必要となった物理的原因とその発生年月日が記載されます。代表的な原因は新築であり、その日付は建物が完成した年月日です。

ⅶ 〔登記の日付〕とは

 登記官が登記を完了した日です。登記を申請した日ではありません。

2-1-3-4 表題部(敷地権の表示)

 マンションの部屋に住むためには、マンションが建っている土地を使用する権利が必要となります。この土地を使用する権利を「敷地権」と言います。

ⅰ 土地の符号とは

 敷地権が及ぶ土地を特定するために付けられた便宜的な番号です。

ⅱ 敷地権の種類とは

 ほとんどの場合は、「所有権」となります。他には「地上権」などがあります。

ⅲ 敷地権の割合とは

 土地の持分です。大抵、部屋の面積に応じた土地の持分が敷地権の割合として表題部に記載されます。

ⅳ 原因及びその日付とは

 敷地権発生の日付と敷地権が記載されます。なお、敷地権発生の日は、新築の日、もしくは規約によって敷地権割合を定めた場合には、どちらか遅い日となります。

ⅴ 〔登記の日付〕とは

 登記官が登記を完了した日です。登記を申請した日ではありません。

2-2 権利部 甲区(所有権に関する事項)

 権利部の甲区は、所有権に関する事項で、順位番号、登記の目的、受付年月日・受付番号、権利者その他の事項で構成されています。これは、土地、1戸建の建物、区分建物に共通しています。

2-2-1 順位番号

 順位番号欄にある1、2といった数字は、登記された順番を示すものであり、1の方が2より早く受け付けられたことを意味しています。
 なお、所有者の氏名や住所の変更などがある場合、独立した順位で登記されるのではなく、主登記と同じ順位を維持したまま「付記登記」として行われます。

2-2-2 登記の目的

 所有権についてどのような目的で登記が行なわれたかを示すものであり、オーソドックスな形として「所有権保存」「所有権移転」が挙げられます。

① 所有権保存とは

 土地や建物の最初の所有者が所有権を登記する場合、「表題部」に登記されます。しかし、「表題部」における登記だけでは所有者としての権利を広く知らしめることができず、法的な対抗力を持たせることができません。したがって、最初の所有者は、「私がこの土地、もしくはこの建物を所有しているのです」ということを知らしめるため、「甲区」において『所有権保存』の登記を行ないます
 以降「甲区」における『所有権保存』の登記を基礎として、売買等による所有権移転、その他所有権に関する登記が行われます。

② 所有権移転とは

 一般的には売買によるものですが、贈与、相続、財産分与によって所有権が移転されるケースもあります。
 贈与は、前所有者が生きている間に無償で提供を受けた場合、相続は、前所有者の死亡に伴って親族などが継承した場合、財産分与は、一般的に夫婦の離婚などに伴って財産を分けた場合です。贈与や相続といった所有権が移転した「原因」は、「権利者その他の事項」の部分に記載されます。

~たまにみかける「所有権“一部”移転」の例~

 上記は、東京太郎氏が東京花子氏に所有権の一部として1000分の200を贈与した例です。これによって、当物件の所有者は、共有者という表現に変わり、所有権の持分割合は、東京太郎氏が1000分の800、東京花子氏が1000分の200となります。

③ 更生の登記とは

 登記後、登記されている事項に錯誤(勘違い)があったことが判明したときに、その誤りを訂正する登記です。サンプル登記の例では、年数を経て所有者の住所に誤りがあったことが判明したため、正しい住所の登記が行われたものです。そして、旧住所には下線が引かれます。

~ちなみに~
 “下線”が引かれている部分は、抹消されていることを表しています。これはすべての項目に共通している決まりごとですので、お忘れなく。

④ 「差押」「仮差押」とは

 「差押」とは、土地や建物の所有者が勝手に所有権の移転をできないように、債権者によって行われる手続きです。差押された状態では、所有者は土地や建物を勝手に処分する事ができません。「仮差押」とは、「差押」への移行を前提として登記の優先順位を確保するために行われるものです。
 登記の目的欄に、「差押」「仮差押」が登記されている場合は、要注意です。
 「権利その他の事項」欄において、「差押」をした人は「申立人」や「債権者」と記載されます。

プロの視点
「差押」は資金繰りがひっ迫、
「仮差押」は資金繰りひっ迫の前兆
 「差押」は、民事執行法上の競売開始手続きの一部です。「差押」までの流れは、債権者が管轄の裁判所に対して対象の不動産の競売の申し立てを行ない、裁判所は申立書を審査して問題なければ競売開始決定をします。そして競売開始決定後、裁判所から法務局に対して、対象不動産の「差押」登記が依頼されます。
 「差押」に至る身近な例としては、土地、建物の所有者が住宅ローンなどの借金を返済できなかったり、税金などを滞納している場合が挙げられます。このような事態に対して、債権者である保証会社、国、都道府県等は、対象の土地、建物の所有権が第三者に移転しないよう法律に基づいて押さえ込むのです。
 「差押」を受けた所有者は、約定通りにローンが払えない、または国民の義務である税金さえも払えないということであり、いずれにしても台所事情は厳しく、末期の状態つまり所有者の不動産が整理状態に入ったということを意味しています。
 他に、会社間、個人間での債務不履行によって「差押」されるケースもあります。なお、「差押」が行なわれても、土地、建物の所有者は住み続けることができます。
 一方「仮差押」は、民事保全法上の保全手続きです。判決が出るまでの間、暫定的な保全措置として相手方の財産を「仮」に差し押さえて制限を加えるものです。具体的には、相手方の土地、建物などの換価財産が親族名義にすり替わる資産隠匿や、第三者等への売却処分が行われないよう、相手方の当該土地、建物を確保(保全)するためのものです。
 「仮差押」までの流れは、債権者が管轄の裁判所に対して仮差押命令の申し立てを行ない、裁判所は債権者から提出された資料を判断し、仮差押命令を出します。ちなみに提出された資料に関して、「差押」は厳格な要件が求められますが、「仮差押」は相手方に対して債権を有していることが一応確からしい、という程度の疎明資料で足ります。仮差押命令の発令後、裁判所から法務局に対して、対象の土地、建物の「仮差押」登記が依頼されます。
 「仮差押」に至る身近な例としては、A社は、B社が商品代金を支払わないため、将来の民事訴訟に備えて商品代金を確実に回収できるように、先手を打ってB社の所有不動産を仮に差し押さえるというケースが挙げられます。
「仮」ということで、あまり強い意味がないように思われますが、債権者が将来の債権回収に備えて、債務者の土地、建物を確保しておくものであり、由々しき事態の前兆とも言えます。

~豆知識:「競売」と「公売」の違いってなに?
 「競売」とは、債権者に対する住宅ローンなどの債務の不履行が生じた場合、債権者が、担保となっていた不動産を裁判所の管轄下で強制的に売却することを指します。
 「公売」とは、税金の滞納が生じた場合、国税当局や地方の税務当局が、差し押さえた不動産を権限に基づいて強制的に売却することを指します。
 「競売」と「公売」の違いのポイントは、競売」の時の債権者は民間会社(銀行、保証会社など)、「公売」の時の債権者は官公庁です。

2-2-3 受付年月日・受付番号

 登記が申請されて受け付けられた年月日と受付番号が記載されます。

2-2-4 権利者その他の事項

 通常、登記の原因となった年月日、売買・相続などの原因となる事実、所有者の住所、氏名(会社の場合は、主たる事務所、名称)が記載されています。

プロの視点
土地の取得年月日に注目!
 買ったばかりの不動産であれば、購入のための借入金は丸々残っているであろうし、20年前に買ったものであれば、一般的には返済が進み、借入金は残り少ないと推察できます。

2-3 権利部 乙区(所有権以外の権利に関する事項)

 権利部の乙区は、抵当権、根抵当権など所有権以外の権利に関する事項で、順位番号、登記の目的、受付年月日・受付番号、権利者その他の事項で構成されています。甲区と同様に土地、1戸建の建物、区分建物に共通しています。

~調査員の独り言
お金を貸している立場の人は、やっぱり強いね!
 一般的に抵当権、根抵当権の設定は、金融機関の債権保全策です。ある企業が倒産した時、売掛債権を保有している取引先の大半は、
どうせ銀行が全部持って行っちゃって換価して貸金を回収してしまうんでしょ。我々には一銭も入って来ないよ、仕方ないね」
と溜め息をつきながら決まり文句のように言います。これは取りも直さず、取引銀行が資金を貸しているという優位性のもと、したたかに倒産企業の所有不動産に抵当権、根抵当権を設定していることを嫉妬交じりに言っているんですね。
 昔話になりますが、債権者明細を見る機会があった時、前述の取引先の言葉を裏付けるように債権者の上位、すなわち大口の債権者は名だたる銀行ばかりでした。これじゃ、確かに取引先の取り分はないよね。

2-3-1 順位番号

 甲区に準ずるものであり、権利関係の優先順位を示すものです。乙区においては、1番(根)抵当権、2番(根)抵当権などの順位づけは重要な意味があります。これは貸金を回収する時の優先順位となるからです。

~抵当権の順位が、貸金・債権の回収時の優先順位になるとは?~
 例えば、債務者の土地にA銀行は2,000万円の1番抵当権、B信用金庫は1,000万円の2番抵当権、C信用組合は500万円の3番抵当権を設定していたとします。
 諸般の事情により債務者は返済が滞り、土地は競売にかけられ3,000万円で落札されました。この場合の回収額は、A銀行は2,000万円、B信用金庫は1,000万円、C信用組合は0円となります。

2-3-2 登記の目的

 抵当権設定根抵当権設定など登記が行なわれた目的が記載されています。

① 抵当権とは

 金融機関は資金を貸すにあたって、貸金に見合うような不動産を差し出すことを要求してきます。この差し出された不動産を「担保」と言います。そして、抵当権とは返済が滞ったときに差し出された不動産が売却され、その代金から優先的に返済を受けられる権利です。一般的に、債務者は個人であり、住宅ローンを組む際に見受けられる権利です。
 抵当権は、「特定の契約」に対して設定されるものであり、金額の表示方法は「債権額」になります。不動産購入年月と前後した抵当権の設定は、対象者が住宅ローンを組んだものとみられます。通常、対象者が債権者である金融機関等に対して約定どおり借金を完済すれば、「抵当権」は消えます。

② 根抵当権とは

 性格的には前記の抵当権と同じように、返済が滞ったときに差し出された不動産が売却され、その代金から優先的に返済を受けられる権利です。
 抵当権との違いは、一般的には抵当権は個人を債務者として設定されるのに対して、根抵当権は“継続的に事業を営む企業、個人事業主”を債務者として設定されます。例外的に個人を債務者とする根抵当権が設定されているならば、個人もしくはその親族が事業を営んでいるとみられます。
 根抵当権は「継続的な商取引を前提」としているため、抵当権と異なり住宅ローンなどを完済しても消えるものではありません。借金完済の都度、新たな融資を受けるために抵当権を設定していたのでは手間と登録免許税などコストがかかってしまうため、企業、個人事業主は、一度設定すれば取引を解消しない限り消滅しない根抵当権を選びます。
 根抵当権は、企業、個人事業主と金融機関等の間で、借りたり、返したりなど金銭貸借が反復的に行われる場合、融資の上限を決めて設定されるものであり、金額の表示方法は「極度額」になります。「極度額」は「融資枠」と言い換えることができます

プロの視点
抵当権、根抵当権の抹消登記の原因について
 抵当権、根抵当権の「抹消登記」において、原因としては「弁済」「解除」「放棄」などと記載されます。結果は同じ抹消登記に結び付くものですが、「弁済」「解除」「放棄」の区別って何なんだろう?って思いますよね。
 一般論としては、「弁済」の場合は銀行、信用金庫などの金融機関がお金を貸して、お金を貸した金融機関が抵当権、根抵当権を設定するケースに見受けられます。債務者が金融機関からお金を借りて、その後金融機関にお金を完済したということですね。
 ただし、上記の例のように「弁済」ではなく、「解除」や「放棄」も使われます。「解除」「放棄」の一般的な例は、お金を貸すのは銀行ですが、抵当権、根抵当権を設定するのは保証会社というケースです。これは、債務者は金融機関からお金を借りるのですが、もし借りたお金を返済できなかった場合、最終的には保証会社に肩代わりしてもらうというものです。したがって、債務者と保証会社との間で保証委託契約が交わされ、併せて抵当権設定契約も結ばれます。約定どおり、債務者が借りたお金を金融機関にお金を完済したことによって、保証会社は、「保証委託契約は無効になったので解除しましたよ、放棄しましたよ」っていう意味合いが込められているんです。
プロの視点
メインバンクを読み取ろう!
 複数の金融機関から抵当権、もしくは根抵当権が設定されている場合、断定はできませんが、債権額もしくは極度額の一番大きいところがメインバンクと見ていいと思います。
プロの視点
「抵当権設定“仮”登記」「根抵当権設定“仮”登記」があった場合、抵当権者、根抵当権者に注意
 仮差押の項でも説明しましたが、「仮」ということで、あまり強い意味がないように思われますが、抵当権設定仮登記、根抵当権設定仮登記が付けられるのは、一般的な金融機関以外、すなわち信販会社やサラ金、街金など市中金融業者が権利者(債権者)であるケースが多いです。大概、債務不履行を予見したことによるものであり、当該登記のある対象会社、対象者は要注意です。
③ 賃借権設定とは

 賃借権とは、賃借人(借りる人)が、賃貸人(貸す人)に賃料を支払って不動産の全部または一部の使用および収益をする権利です。不動産を所有している人が賃貸人になります。わかりやすく言うと、「大家さん」です。

“やっかいな”「建物」における賃借権設定の登記、仮登記
登記の目的欄に「賃借権設定」の登記もしくは仮登記があった場合は要注意!!
 賃貸人(大家さん)が不動産を第三者に譲渡した場合、賃借人が建物に対して賃借権の登記をしていれば、賃借人は新しく賃貸人となった第三者(新しい大家さん)に賃借権を主張することができるのです。簡単に言うと、借りている人は、「賃借権の登記」を振りかざして「この部屋は陽当たりがいいし、住み慣れているから大家が代わっても、どかないよ」ってことを法的に主張できるのです。
 つまり、第三者が競売で不動産を落札しても、賃借権が付けられている場合は、入居している人の占有を認めざるを得ないのです。賃借人は、これを逆手に取って「どいてもらいたければ、それなりの誠意を見せてよ」と遠回しに言って揺さぶりをかけ、暗に「立ち退き料」を求めてくることが考えられます。
 ですから賃借人が筋の悪い、立ち退き料奪取の目的で居座る“占有屋”であった場合は面倒なことになります。賃借人の素性には要注意が必要です。

 上記の他に、金融機関などが賃借権者、もしくは権利者となって債権回収の名目で、譲渡、転貸できる特約を付して設定する場合もあります。この場合は、不動産の所有者の資金事情が良くないと察しがつきます。
 “やっかいな”と銘打ったのは、これらのことが想定されるからです。

 例え、賃借権が「登記」ではなく「仮登記」であっても、“やっかいな”状況には変わりはありません。土地と建物をセットで購入する場合、建物に対して賃借権が付いていると面倒なことをはらんでいますので、最悪の事態を想定して賃借人の素性を精査したほうがいいと思います。

~条件付賃借権設定仮登記って長ったらしいけど、何?
 堅苦しい表現ですけど、何も難しくありません。そのまんま読んで字のごとくです。
 下図の例でいうと、「権利者その他の事項」欄の原因に「条件 同日手形割引契約、継続的貸付契約の債務不履行」とあります。簡単に言うと、「借金の返済が滞ったら、賃借権を正式に設定させていただきます。そして譲渡、転貸の特約を付けたこの権利を行使して、借金の返済に回しますよ」ということです。

2-3-3 受付年月日・受付番号

 登記が申請されて受け付けられた年月日と受付番号が記載されます。

2-3-4 権利者その他の事項

 権利の内容について記載されています。抵当権であれば、原因、債権額、損害金、債務者、抵当権者が、根抵当権であれば、原因、極度額、債権の範囲、債務者、根抵当権者が記載されます。そして、共通して共同担保が付されることが多いです。

① 原因とは

 一般的に抵当権の場合は、「平成○年〇月〇日金銭消費貸借平成○年〇月〇日」「平成○年〇月〇日保証委託契約による求償債権平成○年〇月〇日」などと記載されます。根抵当権の場合、登記されるに至った原因日付のみが記載されます。両方に共通して、まれに債権譲渡を原因とする権利の移転があります。

~保証委託契約による求償債権って何?~
 抵当権者が保証会社の場合に限定されます。例えば、債務者がA銀行から金を借りるとき、債務者が返済できない場合に備えてA銀行系列のB保証会社による保証が付けられます。
 つまり、債務者が資金難に陥ったときに、債務者に代わってB保証会社がA銀行に元金と利息を払うことになります。そのような事態になったとき、B保証会社は、『もし、我々保証会社があなたの借金(元金と利息)を肩代わりせざるを得ない事態になったら、後日、肩代わりした分をあなたに請求しますよ』と主張できる権利です。そして、その肩代わり分を請求する権利を保全するために抵当権が設定されます。

~債権譲渡って何?~
 読んで字のごとく、例えばA銀行が持っている債権をB信用金庫に譲渡することであり、これに伴って抵当権も移動します。1番抵当権であれば、同じ順位が引き継がれます。
 特に、融資している金融機関から整理回収機構への根抵当権、もしくは抵当権の債権譲渡は、最後の砦(とりで)の意味合いが強く、債務者に対する与信は低下ではなく劣化しているとみられます。つまり、整理回収機構への債権譲渡は、融資している金融機関がさじを投げた状態と言えます。

② 極度額、債権額とは

 抵当権設定の場合は、「特定の契約」に対して設定されるものであり、金額の表示方法は「債権額」になります。根抵当権設定の場合、金額の表示方法は「極度額」になります。「極度額」は、融資枠と言い換えることができます。

プロの視点
同一銀行において根抵当権の極度額の減額は、その背景に注意!
 事業が軌道に乗り、一定の手元資金を確保できるようになったことから余分な融資枠を削ったというのであれば問題ないですが、往々にして次の事柄が考えられます。
 同一銀行において極度額が減額している場合、借り手側の債務者の立場では、以前に比べ事業を縮小しているため、余分な融資枠を削除したという見方ができます。一方、貸し手側の銀行の立場では、業績不振を懸念し与信を見直した結果、債務者に対する支援の度合いを小さくしたという見方ができます。
 あるいは、バブル期の異常な地価評価を基に算定していた過剰な枠を見直し、現状の地価に即したものにしたというケースもあります。
③ 抵当権者、根抵当権者とは

 抵当権者、根抵当権者は、権者と言い換えられます。なお仮登記の場合は、根抵当権者、抵当権者という表現ではなく、権利者という表現に変わります。

プロの視点
抵当権者、根抵当権者が、聞き慣れないノンバンク、サラ金、街金、関係性が見い出せない会社、個人となっているケースは要警戒!
 一概には言えませんが、真っ当な金融機関からの借入ができず、また信用保証会社による保証も受けられない状況と推察できます。抵当権者、根抵当権者が個人のケースでは身内ならまだしも、俗に言う“金貸し”であった場合、警戒レベルは高いです。
プロの視点
途中で抵当権者、もしくは根抵当権者である金融機関が変わっているのは何か理由があるはず。見逃さないで少し考えて!
 創業当初は信用金庫との融資取引であったが、事業好調を背景に途中から地方銀行とも融資取引するようになったなど格上げのケースは、特に問題はないです。
 しかしその逆、つまり、これまで地方銀行を融資行としていたが、途中から信用金庫からも融資を受けるようになり、かつ信用金庫の極度額が地方銀行の極度額を上回ったケースは、要注意です。これはメインバンクの変更を意味するものであり、見過ごせない事象です。
 メインバンクとは、双方の揺るぎない信用のもとに成り立つものであり、簡単に変更とはいかないのが常です。したがって、メインバンクの変更は、双方に何らかの亀裂が生じたか、もしくは地方銀行が業績、資金事情に鑑みて極度額を相応に小さくしたため、格下の信用金庫に頼ったとの見方ができます
 ただし、信用金庫側の低金利融資の提示など営業的な側面から単に乗り換えた、いわゆる“借り換え”という解釈も成り立つため、この限りではなく、金融機関の変更は注意喚起のシグナルとして捉えたほうがよいです。
④ 共同担保とは

 俗にいう「共担(きょうたん)」です。
 銀行など金融機関は債務者に対して、融資に見合った不動産を差し出すことを要求してきます。そして、融資金額によっては1つの不動産では足らず、複数の不動産を差し出してくださいと言ってきます。こうした複数の不動産をセットにしてまとめたものが共同担保です。
 身近な例としては、新しい家を借入金で購入した場合、その土地と建物をセットにして金融機関に差し出し、借入金に対する共同担保となります。

⑤ 共同担保目録とは

 共同担保目録とは、共同担保の内訳を明らかにする書面であるため、所有する不動産の全容を探る有効な手段として重宝されます
 共同担保目録は、下図のように権利部(乙区)の次に記載されています。

⑤-1 記号及び番号とは

 共同担保目録に付けられる固有の番号です。権利部(乙区)の「権利者その他の事項」に記載されている番号が転記されます。上記の例では(は)第2005号のことです。

⑤-2 番号とは

 共同担保を登記する際、登記順に割り振られる番号です。上記の例では、1番目に土地が登記され、2番目に建物が登記されています。

⑤-3 順位番号とは

 各々の不動産登記の権利部(乙区)において付けられた順位番号(権利関係の優先順位を示すものです)が転記されます。上記の例では、権利部(乙区)の順位番号1のことです。

プロの視点
共同担保目録は隠し財産を調べられる裏ワザ!?
 共同担保目録の記載があれば、別にも不動産があることは確実で、それを見れば所有している不動産の全容をほぼ把握できるのだから、積極的に利用しない手はありません。
 例えば、「共担目録を見たら、都内の自宅以外に千葉、神奈川、埼玉にも所有している不動産があるんだ。資産家だなぁ」なんていうケースもありますよ。
 これら不動産背景を把握することで、担保余力との兼ね合いになりますが、財力、生活水準のレベルを大まかに捉えることもできます

3.まとめ

 いかがでしたでしょうか。不動産登記が皆さんのビジネス、個人の商取引をする上でお役に立つと幸いです。

 インターネット情報が横行し情報過多となっている時代、何が本当で、何が「デマ」なのか見分けがつかず、混沌としています。そうした情報が交錯する中にあって不動産登記は、商業法人登記と同様に国による情報提供であり、信頼度の高いものです。稀な例として、積水ハウスの地面師事件に見られる不動産登記の偽造がありましたが、一般的に不動産登記は、その不動産を所有する会社、個人の経済の実態をほぼ反映しています

 また不動産登記は、商業法人登記と並んで様々な情報が盛り込まれ、そして危険な情報も影に潜んでいます。代表的な事例を本文で述べましたが、「差押」およびこれに付随する「競売開始決定」「仮差押」「抵当権者もしくは根抵当権者などの素性」は要注意であり、危険な兆候の最たるものです。危険な兆候を察知し対処しておけば、悲劇を回避することができたケースは多々あります。損害を被ってはじめて「登記情報をしっかりと理解しておけばよかった」と嘆いても、後の祭りです。悲劇を回避するためには、宝の持ち腐れとならないよう情報を的確に理解することが求められます。

 繰り返しますが、不動産登記は商業法人登記と並んで、企業調査、個人調査における資産状況を知る上でキホンの“キ”であり、危険な情報も影に潜んでいます
 不動産の状況を読み解くツールのひとつとして、低コストながら情報盛りだくさんの不動産登記をぜひ活用してみてください。

 

ビジネスでの調査なら総合調査のトクチョーへ

1965年創業の信頼と実績。

総合調査会社として、企業経営やビジネスでの意思決定に必要な、データベースからは得られない情報をお届けしています。

状況に応じた多面的な調査により、取引先や競合企業についてより充実した理解のためにご利用いただけます。

コメント

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください