経歴詐称・モンスター社員で痛い目に遭わない為の採用調査の活用方法
2018/02/05
履歴書や職務経歴書に事実と異なることを記載している人は、実際の業務に就いた時にも都合が悪いことがあれば、それを隠蔽したり誤魔化すという因子を持っている人だと言えます。
このような「嘘」は試験や面接でどれだけ見抜くことができるのでしょうか?
調査会社の実績において、経歴詐称や職歴でのネガティブ情報が発覚する確率は調査全体の5~10%程度(業種や職種によってその傾向には幅があります)です。あとの9割方の応募者については、本人の申告や面接で聴取された内容と一致した情報が得られ採用を後押ししてくれる報告となります。
しかし、この20人に1人のトラブル保有因子を見過ごし侵入を許してしまうことで、労務管理の現場に混乱を来したり、経営の屋台骨を揺るがしかねない事件に発展したりすることもあるのです。
こうした経歴詐称をするような問題ある人材の採用を防ぐために採用調査の有効な使い方、判ること、そして履歴書・職務経歴書の嘘を見抜くチェックポイントを具体的にご指南します。
目次
適性試験の結果は最良、面接での受け答えも非常に好感触、求めるマネージャーとしての経験も豊富。是非にと入社してもらった幹部候補社員が、前職でパワハラが原因で退職勧奨されていたことが分かってしまったら・・・・・。
▪ 一度採用した社員は簡単には辞めさせることはできない
仕事をして報酬を受けるという労働者の立場は生活を営む上での基礎であり、法的に厚く保護されています。一度入社させれば、後に問題が発覚してその社員を辞めさせたいと思っても、労働基準法や労働契約法など様々な法律により幾多の障壁が設けられており、実行するには困難を極めるのです。経歴詐称は懲戒処分の事由として認められていますが、その処分には段階があり、口頭注意、始末書の提出、減給処分や出勤停止など様々にあります。
▪ 懲戒解雇は社員にとっては最も重い処分
その中で懲戒解雇は最も重い処分であり、社員にとっては極刑とも言えるものです。この為、懲戒解雇が認められるためには、その詐称の内容が採用の評価・判断を誤らせる重大なものでなければなりません。過去の裁判において懲戒解雇が認められたケースとして炭研精工事件(平2.2.27東京地判)、グラバス事件(平16.12.17東京地判)などがありますが、いずれも「その告知があったら採用していないだろうという因果関係が認められる」とされた判例です。詐称の程度が微妙なまま解雇を強行したりすれば、対象者から不当解雇で訴えられるリスクが生じます。それでも退職させたいならば、退職勧奨をして自己都合退職に導いたり、一時金を積んで普通退職で辞めてもらうための説得をしなければなりません。
▪ だから採用する前にリスクヘッジをする必要がある
こうした事態を避けるためには、応募者に内定の通知を出す前に、面接や試験の結果とともに履歴書・職務経歴書の申告内容に偽りが無いかなど、判断材料を出来る限り厚くしておかなければなりません。しかし、多忙を極める採用担当者がこうした情報収集に時間を割くことは現実的ではありませんし、履歴書の「嘘」を見抜く為のノウハウを身に付けるような遠回りをすることもできません。人事採用の一担当者ができることには限界があります。調査をアウトソーシング することによって採用活動の効率を上げるとともに、問題を抱えた人物の採用というリスクを軽減することが可能になります。多くの企業が採用時に調査を利用する理由はここにあるのです。
まず前提として採用時の調査を禁止する法律は存在しません。探偵業を兼業している調査会社の場合、探偵業の届け出をする際に監督官庁である公安委員会にも事業内容を提出しています。
一方で、個人情報保護法に関する要点については注意が必要です。同法令では、個人情報を収集する際には利用目的を明示すること、そして個人情報を提供する場合には本人の同意を得ることを義務づけています。採用調査を実施する際には、基本的には応募者本人に告知をして承諾を得ておく必要があります。その方法としては「採用応募者の個人情報取得・利用同意書」といった書類に、選考を目的とした個人情報の情報収集をすることがある旨を記し同意を得ておくのが一般的です。
応募者によっては自分の調査をされることを嫌って辞退してしまう可能性も僅かながらありますが、調べられては困ることがあるために身を引くケースもあり、調査の告知自体が一つの篩分けの効果になることもあります。
採用調査を利用されている企業にもそれぞれに使い方のケースがあります。いくつかのパターンに分類されますのでご紹介してみましょう。
これらには正解があるわけではなくて、その会社の人に対する基本的な考え方や採用活動への姿勢が色濃く反映されるものです。あなたの会社がこれから採用調査の利用を検討されるのであれば、よくお考えになって決定されるべきでしょう。
一方、利用されると決められた場合、採用活動のどのタイミングで調査を入れるか。これにもいくつかのパターンがあり、そのタイミングによって、得られる効果も微妙に変わり、問題をはらんでしまうこともあります。
ご覧の通り、採用調査を利用されるタイミングとしては「内定告知前」が圧倒的に多いです。
(数値は調査会社調べ)
漠然と採用調査といわれても、履歴書の隅から隅まで100%の裏を取れるのか?聴取できないようなこともあるのか?利用されたことがない方では、なかなかイメージが湧かないでしょう。一般的に調査会社で提供される採用調査で何が判るのかをご説明します。
本人のサークル活動、ゼミや研究室での発表や論文などが公開されているケースがあり、在籍していたかどうかは判明することがあります。しかし残念ながら、現在の高等学校・大学の9割方は本人の委任状等が無い限り、第三者の問合せに対して卒業の事実を開示することはありません。ごく一部の専門学校などで照会に応じている学校があるだけです。この項目については本人から卒業証明書を提出させるのが最も確実な方法です。
人事の窓口で、入社・退職年月、勤怠状況、賞罰などの記録、役職などの問合せに返答する企業は全体の40%位と言われています。残りの約30%は在籍の有無程度の照会対応、さらに30%は完全に回答拒否という状況のようです。簡易な取材しかしない調査会社の場合はこの程度の判明状況となります。一方で、丁寧な取材を実施している調査会社の場合は、履歴書記載の所属部署などへの取材をして、その人の仕事ぶり、人物評、退職理由など定性的な情報も炙り出して報告してくれます。この場合、人事部門が完全に回答拒否でも何等かの情報が得られて判断材料の報告に繋がるケースもあります。
調査でよく発覚する詐称の例をいくつかご紹介します。
退職の理由に関しては、回答する企業でも「自己都合」か「会社都合」かだけのケースが大半です。上記にもありますように、簡易な取材の場合はこれ以上の情報は得られません。本人の所属する部署にアプローチされる場合には、履歴書には書かれていない真の理由が判明されるケースがあります。
例えば、
「じつは健康上の理由で退職を余儀なくされた」
「上司との軋轢が年中あった」
「突然出社しなくなり、連絡も無かった」
などの退職に至った背景が報告される場合もあります。
まず、前提として申告された住所に住んでいることは報告されます。その他に町内会への参加や、挨拶の励行、家族状況などが判る場合があります。しかし、都市部のセキュリティーの厳しい集合住宅などのケースでは、「隣に誰が住んでいるのかすら知らない」という状況も多く見られ、経験豊かな調査会社であっても情報の収集には苦労をしているようです。居住地での調査で発覚する極端なネガティブな事例としては、そこに住んでいないことが判明してしまうケースがあります。このことに気が付かずに採用して、本人が転居を申告してこないとすれば、通勤交通費の虚偽申請に繋がってしまうことになります。
これらの他に下記のような項目をオプションで提供している調査会社もあります。
*自己破産をしていないか
*記事になるような問題を起していないか
*SNSでバカッターのような変な発信をしていないか
*不動産登記簿取得から不審な借金や税金滞納などないのか
履歴書・職務経歴書と対峙するとき、どうしても応募者の経験業務内容や実績・職務能力に目を取られ、細かい部分がなおざりになりがちです。しかし、この細かいところにこそ詐称の芽が隠れていることが多いのです。
誰でも知っているような有名企業、業界では名前が通っている企業などは別にして、申告された職歴にあなたが知らない企業名があれば、ザクッと検索しておきましょう。今日、実業があり営業活動している企業でホームページが無いケースは殆どありません。検索でその企業名がまったくヒットしなければ、「嘘」である可能性は相当に高いです。
申告された職歴に勤務地の記載が無ければ、出来るだけ面接で確認するようにしましょう。できれば最寄駅レベルで聞くことができればベストです。昨今、支社や営業所の統廃合は日常茶飯事で、「本人が申告した期間には既にその営業所は閉鎖されていた」などという事で詐称が判明するケースもあります。
在職中に転職活動をして退職直後に次の会社に入社できるケースは決して多くありません。突発的な退職であれば、転職活動に半年~1年かかってしまう場合も多々あります。些細なことの様に見えますが、この部分を正直に申告しているかどうかは本人を見極める上で大切な要素です。転職を繰り返していて、空白期間がまったく無いとすれば要注意。こうしたケースで調査された場合、在籍期間の年単位での意図的な詐称が露見されることもあります。
営業や販売業務で、営業所や店舗名の記載の無いケースがしばしば見られます。この場合は、必ず就業していた支店・営業所名、店舗名は確認します。勤務地の場合と同様に、就業部署の水増しを見破るための基本情報となります。システム開発会社勤務などの場合、関わったプロジェクトや出向先は申告していても、所属部署の記載が無いケースが多々あります。所属部署名は面接で出来る限り聴取しましょう。正確に素早く答えられないとすれば、何かを隠している可能性があります。役職については、少しでも上に見せようという心理が働き、出来心で「課長」を「部長」にしてしまうような詐称は散見されます。管理職・幹部候補などの採用の場合は、部下は何人いたのか? 管掌部署としての実績は? その職位に就いていた期間は?など詳しく突っ込みましょう。
この様に履歴書・職務経歴書では、漫然と眺めていれば見えてこない裏側も、要所要所ポイントを押さえて深読みすることで、隠されたネガティブ情報を炙り出せる可能性があります。最終的に面接で応募者本人に疑問点を質して、本当の事を正直に吐露してくれれば問題は解決し採否の判断材料とすることができます。しかし、どちらかと言えば、自分のついた「嘘」を正直に告白する人間は少数派で、本人が白を切り通した場合は、深読みで抱いた疑念はそのまま残ってしまいます。
「履歴書の深読みでチェックしたポイント」・「面接のあいまいな答えから生じる疑念」に加えて、採用調査を利用することで応募者の実像がより確実に炙り出され、内定後・採用後の不測の労務トラブルのリスクを軽減することがきるのです。
人材の採用活動は、できることならば性善説に立って行いたいものです。しかし、残念ながら意図的に経歴を偽り次なる就職先への侵入を試みる輩が100人中数人は存在することは事実で、応募者の申告内容を100%鵜呑みにしてしまうとリスクを背負い込んでしまう可能性があることは現実問題です。リスクヘッジのためのアクションを何もせずに「こんなはずじゃなかった」というトラブルを抱えないために、「この人は信用できるのだろうか?」と疑心暗鬼な悶々とした時間を過ごさないために、採用活動の中に「採用調査」を導入されることは有効な施策であると言えるでしょう。
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