土地の履歴を調べ、災害リスクを知る~猛威を振るう自然災害への対処

2020/09/02

土地の履歴

近年、想定外の豪雨による自然災害が相次いでいます。昨年2019年の台風19号による首都圏の大規模水害は記憶に新しいところ、2020年も梅雨前線の長期停滞による大雨から全国各地で河の氾濫や土砂崩れが相次ぎ、貴重な人命や住宅を失う災害が続出し、数十年に一度を想定した「特別警報」も、今や特別ではなくなりつつあります。
こうした時代を生きていくうえで、生活に欠かせない住宅はどのような場所に建て、また、逆に建てることを避けるべきでしょうか。人の命と財産を守るための土地の災害リスクを知る具体的な方法について、本記事では解説します。
 

1. 増え続ける自然災害に脅かされる人命と住宅

まずは近年、私たちの身近で起きている自然災害の中でも最も身近な、大雨による豪雨災害と、その被害の実態について確認してまいります。
 

1-1. 連続して発生する豪雨災害と特別警報

本年7月、全国各地に大きな被害をもたらした豪雨は「令和2年7月豪雨」と名付けられました。
新型コロナウイルスの全国的な大流行にも重なり、避難所等で不自由な暮らしを余儀なくされている方も多いと存じます。被害に遭われた地域の方々には、心よりお悔やみと、早期の生活再建と地域の復旧をお祈り申し上げます。

また昨年、令和元年は、台風第19号の豪雨により、広範囲に河川の氾濫やがけ崩れ等が発生し、死者96名、行方不明者4名、家屋の全半壊等27,684棟、家屋の浸水 59,716棟 (国土交通省発表)といった極めて甚大な被害が広範囲で発生しました。首都圏でもマンションの人気エリアで水害が発生したことは衝撃的で、記憶に新しいところです。
さらに一昨年、平成30年7月豪雨では、西日本を中心に広域・多発的に河川の氾濫、がけ崩れ等が発生。死者223名、行方不明者8名、家屋の全半壊等20,663棟、家屋の浸水29,766棟 (国土交通省発表)と、甚大な被害が広範囲で発生しました。

こうした豪雨の際には気象庁より「特別警報」が出されましたが、特別警報が対象とする現象は、18,000人以上の死者・行方不明者を出した東日本大震災における大津波や、観測史上最高の潮位を記録し、5,000人以上の死者・行方不明者を出した「伊勢湾台風」の高潮が該当します。特別警報が発表された場合、お住まいの地域は数十年に一度の経験したことのないような、重大な危険が差し迫った異常な状況にあり、ただちにその場所から避難する等、命を守る行動が求められる状況に際していることになります。
 

1-2. 自分の身は自分で守るしかない

特別警報が発令され、直ちに命を守る行動が必要であると呼びかけられたところで、夜間であれば周囲がよく見えず外出そのものが危険であったり、道路が水没したり土砂崩れが生じており、避難所まで到達することが既に危険な状態にあったり、最悪の場合は避難所そのものが被害にさらされていることも考えられます。
浸水が迫り命の危険を感じた場合、避難所まで無理して移動せず、自宅の2階以上や屋根の上へ避難して身を守ることや、生存に欠かすことの出来ない水や食料については数日分をストックしておくといった備えが必要となります。

行政を担う地方自治体でも、災害に備えるべく普段より災害ハザードマップ(*) を作成して自然災害リスクの高いエリア情報を公開しています。また、実際に自然災害の発生リスクの高まった際には防災無線 を通じた避難の呼びかけ等がなされていますが、自治体としても決して万能ではなく、想定外の迫りくる災害を前にして十分な対応が取り切れないことも考えられます。行政・自治体の指示に頼るのでなく、私たち自身で、正に「自分の身は自分で守る」ことが必要となっています。
 

*用語の説明:ハザードマップ

自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したもの。予測される災害の発生地点、被害の拡大範囲および被害程度、さらには避難経路、避難場所などの情報が既存の地図上に図示されている。
被害予想地図を利用することにより、災害発生時に住民などは迅速・的確に避難を行うことができ、また二次災害発生予想箇所を避けることができるため、災害による被害の低減にあたり有効。 日本では、1990年代より防災面でのソフト対策として作成が進められている。

2. 災害リスクを抱えた土地における住宅開発

このように私たちの命や財産が自然災害にさらされる危険性はかつてなく高まっていますが、そのリスクを低減させることは出来ないのでしょうか。自然災害がもたらした被害は、その原因を不可抗力として済まされがちですが、予めリスクについて認識し、避けるよう対策を講じておくことで、リスクを低減させることは出来ないのでしょうか。
 

2-1. なぜ災害リスクを抱えた土地に住宅が建設されているのか

国土交通省の河川審議会答申 ~「総合的な土砂災害対策のための法制度の在り方について」において、土砂災害特別警戒区域における住宅および社会福祉施設等に対する立地抑制策が提案されています。
すなわち、国としても、危険な場所に家を建てて居住することに対する警告を発しているということです。
しかしながら、こうした提案にも関わらず、未だに災害リスクを抱えた土地において、住宅開発は進んでいると思われます。
一体何故なのでしょうか ・・・よく調べると、災害危険地域に住む地元住人らの生声として、以下の声が聞こえてきました。
 

👂 聞こえてきた生の声 👂

【某地元住人】
「昔は水害でとても人が住める場所ではなかったが、最近は水害が起きず、水害の記憶は薄れていった。今の若い人たちは、そもそもここで水害があったことを知らない」

【某地元事情に明るい人】
「住民は便利な土地を安く買え、開発業者は儲かり、自治体は住民が増え、それぞれ利害が絡み合っている」

 

関係者それぞれの利権が絡むことで盲目的となり、自然災害のリスクに目を背けてしまっていることが伝わってきます。
しかし、冒頭でも触れた通り、自然災害は今後も容赦なく幾度と襲来し、そこに生きる住人の命と財産は常に大きな危険にさらされることになります。災害のリスクを知り、危険な場所には住宅を建てない、建てさせないという『減災』の考え方こそが、これからは住民だけでなく、開発業者、行政を担う自治体それぞれに必要となっていると考えられます。
日本全国の地方自治体は(ごく一部を除いて)急激な少子高齢化による人口減少に悩み、新たな住民獲得のためであればと、本来住宅としての居住には不適切な土地であっても宅地開発や住宅建築を許可してしまう傾向もあるようです。国土交通省の河川審議会答申においてもこうしたリスクに対する認識が示されており、昨今の自然災害を鑑みると、今や待ったなしの状況で、人命および財産の安全を優先した慎重な判断が求められています。
 

2-2. こうして住宅の災害リスクを知る

住宅の災害リスクを知るには、具体的に以下の方法があります。
 

① ハザードマップで災害リスクを知る

② その土地の過去の災害履歴について調べる

先に説明した災害ハザードマップでは、水害をはじめ土砂災害等のリスクが地図上に示されているため、その土地のリスクを知るうえでは大変参考となります。但し、想定外の自然災害が近年現実に幾度と起きている以上、ハザードマップで安全と区分されているからとたかをくくらず、日常から災害に対して十分備えをして生活することが重要です。
また、近年特に増加している豪雨による水害については、地方自治体が水害記録を保管しており、市役所等の窓口で調べることも可能です。
但し、自治体の保有する水害記録は過去の一定期間しか正確な記録がされていないケース もあり、治水対策が今のように進んでおらず、水害がひどかった何十年以上も以前の記録までは分からないことがあります。
こうした場合、古くからその土地に住む人に直接ヒヤリングをしたり、水害をはじめ大災害があったことを記録した記念碑等を調べることで、災害の記録を知る方法が考えられます。
また、土地の名称に何かしら水害をイメージさせるような文字(例:「氵」さんずい)が含まれている場合、元々その土地は水害に悩まされてきた場所である可能性があります。
しかし現実的に、住宅の建設前に建築主が自らこうした情報を調べることには相応の手間や負担が生じるうえ、先に掲載した生声が示している通り、住宅販売や住民獲得に不利だからという事由で、十分な情報提供がなされないまま、住宅販売業者や自治体が勧めるまま、住宅を建設して住むこと自体がリスクとなってしまうケースも考えられます。
ハザードマップだけの情報では不十分と考えられるが、調べたくてもルートが無かったり、業者に聞いてもよく教えてくれない、手間がかかるといった事由で、土地の過去の履歴について調べることが困難な場合、専門の調査会社を利用して調べる方法も考えられます。

また、災害リスク以外にも、その土地における土壌汚染の有無や、地盤に関しても堅固で安心出来る土地かどうか、予め確認しておきたいものです。しかしながら災害リスク同様、販売業者等からはなかなか思い通りの情報を得られないことも考えられるうえ、信頼のおける調査機関を自分で探すことも難しいというのが実情ではないでしょうか。
こうした場合、公的機関が指定する調査会社をまとめた以下のサイトを利用し、地域に応じた相談・依頼先を調べることが可能です。

環境省 土壌汚染対策法に基づく指定調査機関

一般社団法人 地盤保障検査協会 指定地盤調査会社一覧

気になる費用については、得たい情報に応じて大きな幅があります。「安心を買う」という位置付けで、予算に応じて調査の依頼先へ事前に十分確認したうえで、是非これらの信頼のおける調査会社をご活用下さい。
 

【コラム】~水害リスク情報の重要事項説明義務化と全国ハザードマップ~

2020年7月17日、「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を事前に説明することを義務づけること」とする宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令(令和2年内閣府令・国土交通省令2号)が公布され、2020年8月28日から施行されることになりました。

宅地建物取引業法施行規則の改正について(国土交通省)
これまでの不動産取引において水害リスクについて伝達して説明することが義務化されていなかったこと自体が驚くべき事実ですが、少なくとも本年8月28日以降は、水害リスクについて購入者へ伝えることが義務化されます。 但し、本記事でも触れている通り、過去の水害記録や水害ハザードマップに記載された情報だけで判断しきれない面もあることを認識し、あらゆる方法を駆使し、その土地の履歴を知ることが重要であることは言うまでもありません。

また、日本全国各地の地域ごとのハザードマップを閲覧できるサイトを、国土交通省が公開しています。
調べたい住所を入力すると、該当する地域の自治体が作成したハザードマップに繋がって表示されます。
一部のエリアについては、洪水、土砂災害、津波等の細かな災害の種別に応じたリスク情報が地図に表示され、災害種別を重ねて表示することが出来る等、大変優れた機能があります。この機会に、本サイトを是非ご参照下さい。

全国ハザードマップ ポータルサイト(国土交通省)

2020年7月17日、「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を事前に説明することを義務づけること」とする宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令(令和2年内閣府令・国土交通省令2号)が公布され、2020年8月28日から施行されることになりました。

宅地建物取引業法施行規則の改正について(国土交通省)
 

これまでの不動産取引において水害リスクについて伝達して説明することが義務化されていなかったこと自体が驚くべき事実ですが、少なくとも本年8月28日以降は、水害リスクについて購入者へ伝えることが義務化されます。 但し、本記事でも触れている通り、過去の水害記録や水害ハザードマップに記載された情報だけで判断しきれない面もあることを認識し、あらゆる方法を駆使し、その土地の履歴を知ることが重要であることは言うまでもありません。

また、日本全国各地の地域ごとのハザードマップを閲覧できるサイトを、国土交通省が公開しています。
調べたい住所を入力すると、該当する地域の自治体が作成したハザードマップに繋がって表示されます。
一部のエリアについては、洪水、土砂災害、津波等の細かな災害の種別に応じたリスク情報が地図に表示され、災害種別を重ねて表示することが出来る等、大変優れた機能があります。この機会に、本サイトを是非ご参照下さい。

全国ハザードマップ ポータルサイト(国土交通省)

3. まとめ

新型コロナウイルスの世界的な大流行の収束も全く見えない状況下、地球温暖化の影響もあってか、これまでに経験したことのない豪雨をはじめとした自然災害が相次いで生じています。大切なことは、今後も自然災害は必ず起こるという認識をもって、自分自身で自己の命と財産を守るという能動的な取組みです。 生活に欠かせない命と財産を守るための家を建てる場合、その土地の履歴を十分に調べて知っておくことがいかに重要であるか、住民のみならず、住宅分譲・開発会社と自治体による三者一体での災害リスク回避に向けた意識転換が正に必要になっていると考えられます。
 

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