施工不良から地面師まで?取引の安全に不動産デューデリジェンスを!

不動産デューデリ

2018年、大手住宅メーカーが60億とも70億ともいわれる巨額の土地代金をだまし取られるというショッキングな事件がありました。幸いにもその事件では「地面師」といわれる詐欺師らの集団も、海外に逃亡していた主犯格も無事に逮捕に至りましたが、東京オリンピックや大阪万博に向けて、或いは増加するM&Aに伴う大きな資産の一角として、不動産の取引はますます重要性を増すとともに、不動産取引にまつわるトラブルも増加していくことと思われます。
大きな金額となる不動産の取引で失敗しないためにも、不動産デューデリジェンス(デューデリ/DDとも)について、その概要とポイントを確認しておきましょう。

1.  不動産デューデリジェンスとは

「デューデリジェンス」という言葉は近年のM&Aの増加もあってよく耳にするようになった感があります。「不動産のデューデリジェンス」という言葉も、意味するところは何となくわかるけど実際には何をするのかは知らない、という人も多いのではないでしょうか。

ここでは、不動産デューデリジェンスの具体的な中身に入る前に、その意味を一度確認しておきましょう。

1-1. 「不動産デューデリジェンス」=不動産」の「デューデリ」

以前、当サイトの記事「意味、方法から実践まで!出資やM&Aの為のデューデリジェンスとは」の中で、デューデリジェンスを「英語の「Due(当然)」と「Delligence(義務)」の組み合わせのとおり、言葉の意味そのものは、「当然の義務」「やるべきこと」といった意味で、それを略したものが「デューデリ」です。」と紹介しました。つまり「不動産のデューデリジェンス」とは、不動産(の売買等の際に)当然やるべきこと」を意味することとなり、売買対象の不動産を精査することとなります。

と、ここまで来たところで、逆に不動産取引の経験のある方だと「それって仲介業者が『重要事項説明(書)』でちゃんと調べて説明してくれるんじゃないの?」と思われるのではないでしょうか。

1-2. 不動産取引における「重要事項の説明」とは

「重要説明事項」は宅地建物取引業法(第35条1項)において、宅地建物取引業者により“書面を交付して※1”(つまりいろんな意味できちんと)当事者(買主や借主になろうとしている人たち)に説明することが義務付けられている事柄で、執筆中の2019年2月の時点では14の項目が掲げられています。
 
※1_2017年10月1日~

詳細は法の条文や実際の重要事項説明書、或いは国交省が出している「重要事項説明・書面交付制度の概要等をご覧いただきたいのですが、登記上の所有者や都市計画法・建築基準法などの制限事項、私道に関する事項、ガスや上下水道の状況、工事完了などなどについて文書として売買や賃貸の成立までに書面に明示して説明するものです。ちなみに、売買成立後には、これに代金やその交付時期、違約した場合の取り決めなど契約の諸条件を含めたいわゆる「37条書面」を「契約の当事者」(この場合は上述の買主や借主になろうとしている人たちに加えて、原則として売り主・貸主を含みます)に交付することとなっています。

1-3. 不動産について「精査すべき」3つの側面とは

さて、比較的馴染みのある「不動産」に関しての聞きなれない「デューデリ」は、実際には何を確認すればいいのでしょうか。一般には以下の3つの側面についての確認が行われます。先に説明した「重要事項」を含む意味で使われる場合と、重要事項説明を所与として、それ以上の部分を指す意味で使われる場合とがあります。

【不動産デューデリジェンスの3側面】
不動産DDの概要

2. 不動産デューデリジェンスの主要事項

1章で書いてきた通り、不動産取引は基本的に宅建業者による重要説明を経て行うことになっているのですが、大型の取引や不動産証券化などの重要な取引においては、さらに「精査」としての不動産デューデリを行う事になります。重要事項説明と重なる部分もありますが、以下では特に重要事項説明を超えて行われる内容を中心に説明します。

2-1. 権利関係の確認

権利関係の確認ももちろん重要事項説明の中でも行われています。しかしデューデリの際にはこれをさらに掘り下げて行います。

2-1-1. 所有の正当性の確認

不動産は不動産登記法によって諸々の手続きが定められていますが、実は所有権の移転登記はまだ義務化されていません。2018年6月1日の関係閣僚会議で、今後2020年までに義務化などを盛り込んだ法改正を行うことが漸く決議された状態です。このため、売り主や貸主が登記上の所有者と異なる場合がしばしば生じており、この為に権利関係の確認を行う必要があるのです。

この場合はもっぱら弁護士等に依頼して、所有に至る経緯(相続や売買など)と権原(根本となる権利。≠権限)、手続きの適正さをなどを確認してもらうのが一般的です。これに加えて、昨年世間を騒がせた地面師の事件のような場合を見ると、通常の不動産取引においても、所有者・売主がそもそも本人であるのか、書類などが偽造されたものでないかなど、抜け漏れのないダブルチェックも重要であることを再確認させられた事例とも言えるでしょう。

2-2-2. 売買等取引を行う権利の確認(契約等による所有権の行使への制限の確認)

前項2-1-1で所有権をが確認された場合でも、今度は法や契約により売買等の取引が制限されている場合があり、これも重要事項説明の範疇を超える場合があるためにやはり弁護士等によるデューデリを行います。

法による不動産取引の規制には国土利用計画法による取引規制や都市計画法、関連するまちづくり条例等による規制がありますが、これらは通常は重要事項説明の対象となります。

一方で、売り主となる所有者の事業取引や金融取引等で売買を制限する契約などが存在する場合もあり、宅地建物取引業者の把握の範疇を超える場合も少なくありません。これらの制約については、弁護士等による所有者・売主が持つ重要契約書等の内容確認を中心としたデューデリジェンスの出番となります。

2-2-3. 境界確認

土地の位置の確認は従来、「公図」と呼ばれる明治時代から使われてきた地図上での位置によってきましたが、現況と異なっていたり、精度が十分でなかったことから、2004年(平成16年)の不動産登記法により「14条地図」と呼ばれる新しい地図が作成されるようになりました。この14条地図は「筆界」と呼ばれる土地の登記単位の境界をかなり正確に示していますが、例えば一筆の土地を実際には親族で分けて所有しているなど、必ずしも所有権(つまり、売買で処分したり利用したりする権利)の境界を示しているものではないため、土地所有の境界を明らかにしておく必要があります。

もちろんこれも基本的には「重要説明事項」の一つとして、境界ごとに隣地の所有者の立ち合い(と確認印)のある境界確認書を伴った確定測量図で明示・説明されておくべきですが、古い時代の取引や親しい間柄の取引で曖昧なままになっていたり、逆に既に確定測量図があってもその後の紛争の対象となっていたりする場合がありますので、現地の確認、役所や周辺へのヒアリングを行っておくことで、リスクを低減することができます。

 

2-2. 物性の確認_1:土地・環境

2-2-1. 環境リスク調査

土地の項に分類しましたが、取引対象の土地、建物やその設備について、PCBやアスベスト、ヒ素等の使用、埋蔵の有無などの調査を「環境調査」として行います。地元の自治体において「要措置区域」「形質変更時要届出区域」などに指定されていればもちろんですが、そうでない場合にも、地歴や過去の建物の用途などまでを確認し、有害物質などの利用や埋蔵の可能性がなかったかを確認します。また後述する土壌汚染の様に地下水脈等の関係で少し離れた場所からの汚染の可能性なども考慮して、周辺地までの調査が必要となります。

2-2-2. 土壌汚染調査

平成15年(2003年)に土壌汚染対策法が施工され宅建業法35条1項2号に関する重要事項説明の対象となったことから、それ以降に適切な取引がなされている不動産では土壌汚染調査が既に行われている事例もみられるようになっています。

一方で、土壌汚染等の環境調査が一度も行われていない場合で近隣に工場などの有害汚染物質の使用が疑われるものが存在する(或いは過去に存在した)場合、例え相当程度離れた場所であっても地下水脈や風向き等の関係等で汚染が疑われる場合には、土壌汚染のリスク評価調査(いわゆる「フェーズ1」と呼ばれる実地調査/周辺全体の地歴調査、ヒアリング)を通じて汚染の可能性についての調査を行います。

仮にこの調査で汚染の可能性が高いと判断した場合には「フェーズ2」と言われる土壌の採取分析による概況調査を行い、さらには「フェーズ3」と言われる汚染範囲の推定などの調査を行っていきます。これらは環境省の指定する調査機関(2019年1月時点で727件、879事業所)の中から選んで行ってもらう必要があります。

最終的には汚染土壌の除去が後で明らかになった場合には、除去の費用がかかったり、(その費用を見込んで)売却の価格が大幅に下がったりするために、売買の前に費用負担を決めて、上記の調査を段階的に行う場合が多いようです。

2-3. 物性の確認_2:建物

2-3-1.建物環境リスク調査

土地の項でも触れましたが、現存する建物やその設備についても環境リスクが存在する場合があります。これについてPCBやアスベストの使用の有無、ヒ素などの有害物質の貯蔵や漏洩の有無などを調査することを(建物)環境調査として行います。特に昔の電気設備には有害なPCBを用いた絶縁体が広く使われていましたので、古い設備を備えた建物の場合にはそれらの残存の確認が欠かせません。

2-3-2. 地震リスク評価(PML※2評価)

既存の建物の耐震性については重要説明事項では新耐震/旧耐震(主に昭和56年5月31日以前の建築確認の建物)の別を、特に旧耐震である場合には耐震診断の有無、さらに耐震診断がなされている場合にはその内容、といった形で説明が義務付けられています。

耐震診断では主に建物の地震に対する強さを診断します。これに対して「地震リスク評価」では「一定の強さ(建物の概略の使用期間を50年と想定し、この50年に超過確率10%で発生する地震)の地震が発生した際の損害額」の事とされ、これが再調達価格(もう一度同様の建物を同じ場所に新たに建てる場合の費用)に対してどのくらいになるかを試算するものです。

実際の取引では、このPML値が「〇〇%以上であれば取引を行わない」「〇〇%~〇〇%であれば地震保険の加入を必須とみてこの保険金額を見込んで収益評価を行う」「〇〇%以下であれば保険は不要とみなす」などの基準を作っておいて、ゼネコンや損保会社の評価(レポート)を取得するのが一般的です。(〇〇%は10%~20%の範囲で、買い手のリスクに対しての考え方により設定されるケースが多いようです。)

※2:Probable Maximum Loss:「最大損失額」、定義は上記の「50年レベルの被害想定額が再調達額の何%か」で示すもの。

          予想最大損害額
   地震PML=―—―—―—―—―—―—―—(%)
           再調達価格

地震リスク評価はゼネコンや土質・地盤等の専門業者、或いは損害保険会社の系列等の企業が広く行っており、数十万円から100万円前後が多いようです。

【コラム】不動産調査と地相、家相、風水

家を建てたことがある方なら、ここに上げたような権利関係や土地や建物の物理的な状況、経済性の他に、「地相」や「家相」あるいは「風水」といった事を気にしたことがあるのではないでしょうか。例えば「行き止まりの土地には邪気がたまる」とか、「建物の玄関やトイレは鬼門の方角にないこと」、或いは「玄関の正面に窓があると金運が出て行ってしまう」などなど、枚挙にいとまがありません。

昭和の高度成長期、特にバブル以降の都市部では科学的根拠に乏しいこれらの事は隠されたり、無視されたりして盛んに開発が行われるようになりましたが、一方で、平成の時代の東京都心の大規模開発でも「あそこは江戸城の裏鬼門の方角だった」、事故があれば「風水上よくない形だった」、ヒートアイランドが起きれば「風の通り道をふさいでしまっていた」などと言われます。

昭和の著名な建築家の一人で家相学にも詳しかった清家清(せいけ きよし)氏(1918-2005。お名前からしてまさに「家相学に長けた建築家」になるべくしてなられた、という感じです。第18代慶應義塾塾長、内閣府有識者会議座長などの清家篤氏のご尊父)はその著書「現代の家相」(新潮社1989年)の冒頭で「家相とは何か」との問いかけに答える形で「もちろん、占いの1種としてスタートしたものですから、科学的根拠の全くない、まさに迷信としか言えない内容の家相の卜辞も少なくありません。(中略)ところが家相の言葉をあらためて読み直してみると、迷信どころか、現代にも通用する科学的な裏づけのできる事象が多いことに驚かされるのです。」とし、家相(や地相や風水には)は「長年の試行錯誤の中で得られた経験が積み上げられてできた家づくりのノウハウ集であると考えられる」と述べています。

現地調査の際に買い手や調査員が感じる「違和感」なども、意外に無視できない不動産の評価の一面かもしれませんね。

2-3-3. エンジニアリングレポート

建物の場合、利用に伴う一定程度の増改築・改修や経年による劣化は避けられません。竣工図をはじめとした図面と、建物そのもの(躯体といいます)の構造や形態・形状の整合、本体(躯体)にも、また電気・給排水・冷暖房・昇降機・消防設備など、それぞれの部分ごと等にも概ねの寿命(耐用年数)があり、さらにこの寿命は環境やメンテナンスの巧拙等に拠っても実際の状態がかなり異なります。

「エンジニアリングレポート」では主に①順法性の調査と、②劣化度の診断、③それに伴う修繕費の計画作成を中心に行いますが、先に述べた地震リスク診断や環境調査までも含んで行う場合(建物に関するリスク全部をチェックする意味で使う場合)もあります。

具体的には建築士や各設備の専門の技師による建物各部の形態や消防・避難設備等についての建築確認書類、竣工検査書類等の図面との整合性、劣化やメンテナンスの実施状況を、建物現地に於いての目視、触診、聴診等(1次診断とも言います)で確認・評価するとともに、違法な状態であれば、適法な状態に戻す工事の想定費用、或いは直ちに補修・取り換えなどの修繕(緊急修繕)が必要な場合には一般的なその費用を、さらに今後の一定期間(20年、30年などと想定します)の各種設備の更新計画(計画修繕)とその費用などを見込んで作成します。

なお、2007年からは不動産の証券化取引(一般の所有権の売買と異なり、不動産の所有権そのものは「信託」した上で、そこから収益を得る権利を(証券として)売買する取引)等の増加もあって、経済性を評価する不動産鑑定(後述)においても、このエンジニアリングレポートを参照することが必須とされました。

エンジニアリングレポートはゼネコン、大手設計事務所、設備工事会社や、それらの系列会社等が、建築士や設備の有資格者などの専門チームを置いて広く行っています。費用は面積や建物の特殊性、遠方か否か、依頼者との関係性、初回なのか再調査なのか等で幅があり、概ね数十万円~数百万円となりますが、ある事例では、延床約15,000㎡の病院不動産で250万円ほどでした。

2-4. 経済性の確認

よく商品やサービスについて「1物1価」と言われ、物の価値は需要と供給からおのずと決まるといわれますが、不動産は従来から「1物4価」といわれ、①実勢価格のほかに②公示価格や③相続税評価額、④固定資産税評価額があり、これに後述する不動産鑑定が広まるについて「1物5価」ともいわれるようになりました。

先の述べた物性についての調査も、多くの場合は最終的には修繕や改良の形で経済性にも影響を与えますが、ここではダイレクトに経済性を左右する不動産鑑定調査と実勢価格調査についてあげてみます。

2-4-1. 公的価格の確認

先に書いたように、1物4価とも、1物5価とも言われる不動産の経済的価値ですが、まずは国(国交省や国税庁)、地方自治体(都道府県や市町村)がその不動産の価値をどう見ているかを確認します。

土地については実際には以下のような公的な指標があり、それに基づいて詳細な(例えば正面の路線価と側方の路線価から割り出すなど)計算をして算定します。

  • 公示価格 国土交通省が毎年3月に、全国約26,000地点の1月1日時点の地価を公表します。近隣地の価格の目安になります。
  • 基準地価 こちらは都道府県が全国22,500地点について、7月1日時点の評価を行い9月に公表するものです。
  • 相続税路線価 国税庁が、後述の路線価をもとに、相続税や贈与税算定のために用いる目的で毎年7月に公表するものです。
  • 固定資産税路線価 こちらは固定資産税の算定のために、市町村(長)が3年に一度決定、公表するものです。

また建物については、基本的には再調達価格と言われる想定の建築費を概算した後で、経年などによる原価修正額を差し引いて算出され、課税標準額などが設定されています。

2-4-2. 実勢価格の収集評価

先に1物1価と書いたばかりですが、モノの値段は地域的な場所や流通ルートにより均一ではありません。家電品のようなものとしての形態や機能は全く同じものでも、それなりに差があったのは「価格.com」のような価格比較サービスが広まった

ことからも伺えますが、多くの不動産の様にそれぞれが形状や状況・状態が異なるものの実勢価格の把握は意外と難しいものです。

それでも、いくつかの特性(例えば地域、用途、広さ、主要駅からの距離など)が近い条件の不動産の価格を集めてみると、「実勢」が見えてきます。実勢の収集の主な方法は以下の3つが多いようです。

国土交通省「土地総合情報システム」:国土交通省が設置している情報サイトで「実際に行われた不動産の取引価格を知りたい方へ」と銘打って、情報を掲載してくれています。同じサイトから、各都道府県での公示価格も見に行くことができます。

不動産業者のサイトもしくは不動産流通標準情報システム:不動産流通標準情報システムはレインズ(Real Estate Information Network System)とも呼ばれる、国土交通大臣指定の「不動産流通機構」が管理運営・管理する、コンピューター・ネットワークによる不動産流通標準情報システムで、国内すべての宅建業者が、基本的にはすべての媒介物件を掲載することになっており、近年、その中の売買情報が一般にも公開されるようになったものです。

各不動産会社とも自社物件を中心にレインズに掲載しているものをより詳細な情報をつけるなどしてインターネットに掲載している場合がありますのでこれらを収集することでも一定の実勢を把握できます。

③不動産業者に査定を依頼

不動産業者は宅建業により、REINSを通じて類似の情報の収集もより細かく可能になり、経験等と合わせて「査定」などのサービスを行っている業者も少なくないため、これらの業者に依頼して実勢価格を査定してもらうのも一つの方法です。

2-4-3.収益性の確認・評価

不動産の取得の目的が賃貸等による収益である場合、公的価格や実勢価格からの妥当性の他に、毎年の賃料収入や維持管理費用、その安定性などを含めた収益性の確認を行った上で、それが取得価格や他の投資機会と整合が取れているかを確認する必要があります。

これには既存の物件であれば現在の賃料やその周辺相場、過去の空室率の推移や経済動向の行方までも踏まえた将来的な需要の見込み、或いは改修などを加えての新たな利用形態を予定する場合にはその妥当性と、見込まれる費用など、様々な側面からの経済性の確認・評価を行う必要があります。

そしてこの収益性の確認は自社の投資計画や評価や判断、次の項で述べる不動産鑑定の際の参考資料にも使われます。

2-4-4.不動産鑑定

資産の流動化手法の一つとしてREIT(Real Estate Investment:不動産投資信託)に見られるような不動産証券化などの新たな取引形態が広ったのを受け、投資家保護などの観点から売買不動産の価格の妥当性への議論が高まり、証券化や公売などの際には不動産鑑定の事前取得が義務付けられています。

通常の事業用地やオフィスビルの売買は過去の事例、近隣での事例とその情報が比較的豊富にあるために、買い手側となる事業者或いは投資家も価格の妥当性については適正な市場価格を把握することが可能でした。ところがREITなどでは投資家の一任を受けた運用者が自己の判断で投資(不動産の売買)を行うために、その妥当性を担保するためにも売買価格の適正性が重要になり、専門家である不動産鑑定士の作成する鑑定の重要性も高まりました。さらに2007年からは対象建物の現況をより正確に価格に反映するために、不動産鑑定の過程でエンジニアリングレポートの取得と吟味が義務付けられたのは先に述べた通りです。

実際の鑑定書は難関といわれる国家資格の不動産鑑定士により、重要事項説明に挙がるような不動産の一般的な概要を確認した上で、その不動産の特殊性や収益構造を吟味し、予想収益をキャップレートで割った価格を算出、そのうえで、類似事例や近隣事例の近年の実勢価格の動向、資材をはじめとした物価動向も踏まえた再調達価格の試算などと比較検証するなどして総合的に判断して決められます。

記事執筆の2019年2月時点では、①不動産証券化(資産流動化に関する法律)、②投資信託の設定等(投資信託及び投資法人に関する法律)、③民事再生の手続き(民事再生法)、④会社更生(再建)(会社更生法)、⑤区分所有権の買取(建物の区分所有等に関する法律)の五つの場合には、不動産鑑定の取得が法的に求められています。不動産鑑定業者は国土交通省が管理しており、全国で3,352事業所、4,641名(いずれも平成30年1月1日)となっており、また大手鑑定事務所の一つである大和不動産鑑定株式会社では、大手鑑定事務所のランキングを毎年発表しています。

算定の対象は不動産価格の場合と賃料の場合があります。売買価格は目的によって①正常価格、②限定価格、③特定価格、④特殊価格などが、また算定法には①原価法(再調達原価)や②取引事例比較法(実勢価格)、③収益還元法などがあり、多くの場合は上述の様に複数の価格を見て総合的に算出されます。賃料は、新規の場合はほぼ売買価格の決定と同様に、また継続しての賃料の鑑定の場合はさらにこれに実際の水準が変わったであろう場合と更新の時点のタイムラグを考慮するなどして決定されます。

不動産価格には地域性も大きな要因となるために、地域に所在する鑑定会社が詳しい面もある一方、大手鑑定事務所は多くの、難しいとされる鑑定のノウハウと事例情報が蓄積されていますので、実際の選定にあたっては対象不動産や取引の関係者や状況に応じての制定が必要です。費用はやはり数十万円から数百万円ですが、規模よりも鑑定会社、不動産の特殊性(取引事例が多くあるか否かや、収益性の評価が用意か否かなど)による面が大きく、エンジニアリングレポートでも取り上げた病院不動産の事例では、150万円ほどでした。

 

3. まとめ

不動産取引は通常、煩雑かつ多くの手続きを伴うために、プロである宅地建物取引業者を介して行われる事が通例で、その場合には「重事項説明(書)」によって最低限の情報は確認されています。それでも、近年再び話題となった地面師による詐欺やいわゆる「高値掴み」が後を絶たないように「プロでも騙される」或いは取り引きを過つ難しさもあります。

そのような背景もあって2000年代に入って増加してきた不動産流動化などの新たな取引形態での、ある種より厳格な取引のために「不動産デューデリジェンス」が広く行われるようにもなりました。

時間や費用といったコストも伴うデューデリジェンスですが、「重要事項説明(書)」以上の深い検証を行うことで、不動産に内在する各種のリスクを排除したり軽減したりすることができます。皆さんも重要な不動産取引では、例え法の定めがなくとも、不動産業者任せにせず、物件や取引形態に応じて必要な「デューデリジェンス」を取り入れて、安全・安心な取引を実現しましょう。

 

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