「職場の上司からセクハラ被害!?」人事が対応すべき証拠確保の鉄則

「そのセクハラ、証明できますか?」

 セクハラ被害を受けていたり、被害者からセクハラ被害の相談を受けたりした場合、どのように対応すべきでしょうか?

 セクハラは加害者と被害者しかいない密室状況で行われることも多いため、どちらかの言い分を聞いただけでは事実と異なる前提を基に、誤った処分、判断をしてしまう危険性があります。

 「上司からセクハラ被害を受けている」といった相談を受けた場合、しっかり話を聞いた上で相談内容の事実を証明できるかどうかを確認しましょう。

 証明ができない、または証明が不十分であれば、門前払いをするのではなく、相談内容の事実確認をしっかりと行うべきです。

 相談者が納得のいく対応をしなければ、相談者から弁護士や労働基準監督署へ相談が社外へ行ってしまい、問題を社内で迅速かつ適切に解決するのが困難になることが予想されるからです。

 

 本記事では、セクハラ被害の有無を証明するために、セクハラ被害の相談を受けた人事担当者の観点から対応すべき証拠確保の鉄則について紹介します。

 セクハラ被害を受けているという方も、どのような証拠をいかにして集めるのか、ぜひ参考にしてください。

1 セクハラを相談された場合の初動

 人事、総務等の管理部門や内部監査部門で働かれている方にとって、社内でセクハラの相談を受けることはめずらしくないかもしれません。

 会社によっては「セクハラ相談対応マニュアル」のようなものを用意されている場合もあるようです。

 いずれにしても、ハラスメントに関する相談の対応は、初動が非常に重要です。初動対応で相談者(被害者)の心情を害したり、失望させたりすると、労働基準監督署や弁護士等の外部に相談されることとなって、事態を社内で収拾するという選択肢を取ることが難しくなる可能性があるためです。

 本章では証拠集めの前段階として、まずセクハラの相談を受ける際のポイントを確認します。

1-1 セクハラ相談における初動対応の3原則

  セクハラ相談における初動対応の目的は、状況の把握と情報の適切な共有です。

 その観点で、従業員からセクハラの相談を受ける場合は、次の3つの原則を守ることが重要です。

 ①傾聴する
 ②対応の確約
 ③適切な報告

 この3原則を意識することで、初動対応で失敗することはまずないでしょう。

1-1-1 傾聴する

 1つ目は、セクハラ被害の相談者に対して「傾聴する」ことです。

 セクハラ被害に遭っている相談者は、動揺し、冷静な状態ではないために話が飛躍したり、支離滅裂なことをいったりしているように感じることもあるかもしれません。

 しかし、だからといって「大したことはない」「セクハラではない」「被害妄想である」と決め付けずに、相談者の話をじっくりと聞きましょう。

 冷静に時間をかけ、時系列で話を聞いていくことで相談者も整理して話すことができるようになります。

 また、どのような話であっても、否定したり評価したりせずに、まず受け止めることが大切です。

 傾聴することでしか状況把握は始まりません。

 話をしっかりと聞いてもらえていないというだけで、相談者は他の相談相手を探すことにつながり、適切な情報の共有という目的が破たんします。

1-1-2 対応の確約

 2つ目は、相談者に対して会社として何らかの「対応の確約」をすることです。

 たとえ話を傾聴したとしても、「話を聞いただけで終わり」にされたと感じた相談者は、別の手段に訴えざるを得なくなります。

 証拠がある場合は然るべき措置の検討を行うことを、証拠がない場合は証拠を集めるための手段を講じたり、相談者に集めてもらうためのアドバイスをしたりすること等を約束します。

 約束は口約束にせず、メールや文書等で、相談内容とともに出来るかぎり具体的に対応について記載することで、会社として誠実な対応をしていることの証拠となります。

 対応の確約をしないでいたずらに時間が経過すると、セクハラを相談したにも関わらず放置されたといって、セクハラの加害者だけでなく会社の責任も追及されるというケースも考えられます。

1-1-3 適切な報告

 3つ目は相談があったことについて、自分の上長や取締役等に「適切な報告」をして、情報を共有することです。

 適切な報告をせずに、担当者として一人で抱え込むと、セクハラ問題が長引いたり、大きくなったりしたときに、相談者からも会社からも「隠ぺい」や「報告責任の放棄」等と責められてしまう事態になりかねません。

 具体的な対応は具体的な対応を自分中心に行うことがわかっていたとしても、速やかに適切な報告をするべきです。

 また、「適切な」というのは「適切な報告先に」という意味でもあります。

 証拠集めにあたって、加害者や周辺者に対して事情を聞き取りすることはありますが、それは調査計画を立ててからの話です。

 初動のタイミングでは、証拠隠滅やセクハラ相談をしたことに対する相談者への報復を防止するために、間違っても加害者に対して報告をしてはいけませんし、対応にあたって直接関係ない相談者の上司や同僚等へ安易に報告をしてはいけません。誰が加害者とつながっているかわからないためです。

 知られたくない人に知られてしまったことに気付いた相談者は、会社に対して大きな不信感を持つことになり、適切な情報の共有という初動目的を達することができなくなる可能性があります。

1-2 セクハラの相談でやってはいけないこと

 セクハラ被害の相談は勇気のいる行為です。

 相談に対して、以下のようなことをするのは絶対にやめましょう。

 相談者を失望させるだけでなく、それ自体がセクハラや脅迫だといわれかねません。

× 相談内容に対して自分の評価で「セクハラではない」と言ってしまう。
 →セクハラは被害者がハラスメントと感じるかが基準となることが常識となっています。

× 「セクハラされる相談者に落ち度がある」というようなことを言ってしまう。
 →セクハラ被害者を責めるのは、二次的なハラスメントとなる可能性があります。

× 「詳しく話を聞くから飲みにでも行こう」などと1対1で社外で会うことを誘ってしまう。
 →飲みに誘うこと自体がハラスメントと受け取られる可能性があります。

2 セクハラの認定に必要となる証拠の重要性

 セクハラの相談を受けたときに、確固たる証拠があればよいのですが、しっかりと証拠を揃えた上で相談されるケースは多くはありません。

 本章では、セクハラ被害における証拠の重要性となぜ会社として証拠を集めるべきなのか解説します。

2-1 セクハラ被害の特殊性

 セクハラという言葉が出始めたころは、多くの人がいるオフィス内や飲み会の場でおおっぴらにセクハラが行われていました。最近は、セクハラという言葉が浸透し、衆人環視のもとでおこなわれるセクハラは減ってきて、1対1の状況やメール、SNSを通してセクハラが行われることも多くなっています。

 特に1対1の状況では、被害者本人の証言だけでセクハラを客観的に立証することは非常に困難です。立証することができないと、被害者は泣き寝入りするしかなくなってしまいます。

 そのため、次章で述べるような証拠集めの工夫をする必要があります。

2-2 セクハラ被害の証拠は誰が集める?

 セクハラの相談を受けて、証拠が不十分であると判断した場合に、証拠集めを相談者任せにしてよいのでしょうか。

 なかには被害者が証拠を準備するのが当然であると考える方もいるかもしれません。

 しかし、ハラスメント問題のように被害者=相談者・告発者ではない場合、例えば同僚のコンプライアンス違反の相談や上司の違法行為に対する内部告発の場合、相談者・告発者にだけ証拠を集めさせることはしないはずです。なぜなら、社内で問題が起きている以上、会社として事実を調査、確認して対応していくべきだからです。

 セクハラ問題に対しても、相談を受けて、調査をせず確認を怠れば、それを黙認していたのと同じであるという評価を受けてしまいかねません。

 セクハラの相談を受けて証拠がないという場合は、事実確認をするためにも証拠集めは会社が主体的に行っていくべきです。

3 セクハラの証拠を集める際の鉄則

 セクハラの証拠を集める際の鉄則は、ともかく「客観性」を重視することです。

 前章でも述べたように、セクハラ被害は1対1の密室状況でも起きやすく、被害者本人と加害者の証言だけでは水掛け論で矛盾した証拠しかないという状況になってしまいます。

 そこで、当事者同士の証言だけではない「客観性」のある証拠を集めることが鉄則となるのです。

 本章では、どのような証拠が「客観性」のある証拠として集めることができるのか紹介します。

3-1 目撃証言

 被害者と加害者以外の第三者によるセクハラ現場の目撃証言は客観性のある証拠となり得ます。

 社内であれば同僚、飲食店であればその従業員等、目撃している可能性のある第三者に聞き取りを行うことは非常に有効です。

 第三者に対して聞き取りを行う際、原則としては具体的な事実に関することを「Yes or No」で答えられるクローズドクエスチョンの形で行います。
 これは、質問内容に対しては記憶を遡って答えてもらったり、はぐらかされたり、あとになって回答の趣旨がわからなくなったりしないようにするためです。

 たとえば、A(被害者)がX(加害者)から、会議室に2人だけでいるときに卑猥なことをいわれたり、飲み会の席で身体を触られたという被害を報告してきた場合には、以下のように具体的な事実をあげて質問します。

【直接的な証拠を確認する例】
316(月曜日)、会社の飲み会の際に、XがAの身体を触っているのを見ましたか?」

【間接的な証拠を確認する例】
53(金曜日)、朝礼のあと10時ごろ、X(加害者)が指示してA(被害者)2人だけで会議室に残っていたのを覚えていますか?」

【わるい例】
「AさんがXさんからセクハラを受けていると言っています。何か知っていることがあれば教えてください?」
→質問を受けた側は、何がセクハラとなるかについて判断を委ねられてしまい、Aがセクハラと感じたのとは違う感覚で「セクハラがあったとは思わない」という回答になってしまう可能性があります。
 また、回答が「Yes or No」の形になっていないオープンクエスチョンの形となっているため、その場では嘘をついて、あとになって矛盾を指摘されても「忘れていた」という言い訳ができてしまいます。

 ただし、社内の第三者への聞き取りは加害者との関係を慎重に考慮しなければなりません。

 聞き取り対象者と加害者が以前の所属も含めて同じ部署、同期入社、上司・部下の関係である場合、加害者のことをかばったり、調査していることを漏らしたりして、口裏合わせや証拠の隠滅を図られる可能性があるためです。

 両者の関係性を確認して、もし加害者との関係性が深い場合は、聞き取りの前に加害者のことをどう思っているのか、何か気になることはないかなど、遠まわしに質問することで調査の目的を悟らせないようにすることも選択肢の一つです。
 

3-2 録音・録画

 セクハラの現場をスマートフォンやICレコーダー、防犯カメラなどによって録音・録画した音声・映像データは客観的で覆すことのむずかしい強力な証拠となります。
 
 過去に起こったセクハラに関しては防犯カメラ映像などによって、被害者の証言通りに加害者と被害者がその場にいたことの証明となったり、直接的にセクハラの事実を裏付けることができるかもしれません。

 現在進行形でセクハラが起きている場合は、スマートフォンの録音機能を使って会話を記録することでセクハラの事実を立証できること検討します。

 この際に、「Xさん、○○するのはやめてください」と相手の名前と特定の行為を拒絶する意思表示がはっきりとした音声で記録できると立証が容易になります。
 
 被害者に録音・録画させる場合は、会社として次のセクハラ行為を容認するような態度で被害者に指示することのないように注意が必要です。

 被害者にセクハラ現場で証拠の確保を要求することは、あくまで証拠がない場合の最終手段として提案し、被害者が拒否する場合に無理強いすることはやめましょう。
 

3-3 各種の記録

 メールや日報など、さまざまな業務で使う記録以外にも、家族・友人とのメールやSNSなども記録としてセクハラの証拠として重要な事実認定の基礎になる場合があります。

 どのような記録があるか、公的か私的か、個人で完結するものか他者とのコミュニケーションに関わるかに即して、それぞれ分類されたものがどうして証拠として価値が高くなるか簡単に解説します。

3-3-1 公的な記録

 日報、業務日誌、内部通報、外部通報、報告書など、会社としての公的な記録は、当然上司や然るべき報告先の担当者が会社として内容をチェックするため、単なる私的な記録よりも客観性のある価値の高い証拠として認められる可能性があります。

 被害者から公的な記録にセクハラの事実を直接または間接的に示す記載をしたことがないかについて、丁寧にヒアリングすることが重要です。

 3-3-2 コミュニケーションの記録

 メール、LINEなどのSNSのメッセージ、オンラインチャット、手紙、内容証明郵便、産業医など医者との面談記録、カウンセリング記録など、加害者や第三者とのコミュニケーションに関わる記録は有力な証拠となり得ます。

 コミュニケーションの相手先に対してむやみに嘘や誤りのある内容を発しないであろうという推測と当時の時点で他者により確認されているとの観点から、客観的な証拠として価値が高いものと判断されやすいからです。

 加害者から被害者へのセクハラに該当するようなメールはもちろんのこと、被害者から加害者へのコミュニケーションの記録は内容が間違っていれば加害者が訂正できるはずなので、特に信用性の高い証拠であると考えれます。

 ただし、第三者宛のコミュニケーションであっても、セクハラが発生した時期と発信の時期に大きくずれがあったり、内容が抽象的だったり、矛盾があったりするなど総合的にみて嘘や誤りが混入する可能性が高いと思われる場合は、証拠としての価値は低くなります。

3-3-3 私的かつ個人で完結する記録 

 大前提として、民事の争いの場合は個人的にメモしたものや日記、ブログなどの私的な記録であっても、証拠として認められます。

 しかしながら、自分勝手に書いたものは証拠としての価値が低いものとみられ、矛盾する相手方の主張が認められやすくなってしまいます。

 私的な記録については、以下のような要素を総合的に判断されて、信憑性があり、価値の高い証拠であると認められる場合があります。

・記録内容に具体性、迫真性がある。
 現実に起こったからこそ書ける詳細な状況があるほど信憑性が高い。

・記録に継続性がある。
 一時的に書かれたものより、より継続的なものの方が信憑性が高い。
 
・記録内容に現実との矛盾がない。
 日付や実際の出来事と矛盾する内容があると信憑性が低くなりやすい。

 日記やセクハラに関するメモを残すことは、証拠という点でも重要であると同時に、あとから見直してこれを元に証言をすることで一貫した矛盾のない主張をすることができるという効果もあります。

まとめ

 セクハラの初動対応における①傾聴する、②対応の確約、③適切な報告を行い、目撃証言、録音・録画データ、さまざまな記録などの「客観的な証拠」を収集することで、セクハラ問題への対処は的確かつ効率的になります。

 「客観的な証拠」を集め、何が起きていたのかを明確化することで、防止策、今後の職場改善策もより具体的なものとすることができます。

 セクハラ被害の相談を受けた場合、まず本人に聞いてみようといって加害者への聴取をするのではなく、「客観的な証拠」を集めて慎重に事実の確認をした上で、対応の検討を行いましょう。

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