会社の在庫をネットで不正転売!なぜ管理職従業員は横領に走ったのか

在庫 倉庫 横領

 インターネットで買い物をするのが当たり前になると同時に、インターネットを介した不正案件も増え続けています。

 「海賊版」や「フェイク品」といわれる偽物の販売、正規代理店以外による不正転売、商品を送らない代金詐取など、総合調査会社であるトクチョーには、いわゆるEコマース(EC)と呼ばれるインターネット売買に関する相談も数多く寄せられます。

 今回は、そうした中でも、「インターネットオークション」に関わる不正調査案件について紹介しましょう。

 

 従業員約50名、地方に工場を持ち自社ブランドで高級雑貨を制作・販売するA社は、小売店への提供だけでなく、都内に自社路面店を展開しつつ、インターネットでの販売も手掛けている企業です。

 お付き合いのある弁護士の紹介を通して、A社のB専務から連絡がありました。ある事件を発端として「A社の社内に在庫品の横領犯がいるのではないか」という疑いが浮上、職場の雰囲気は最悪となりつつあるとのことでした。

 B専務に詳しく話を聞いてみると、「販売している高級雑貨が、ネットオークションで『新品』と表示されて定価より安く出回っている。誰がそんなことをしているのか、商品が本物かどうかも確認したい」と言います。

 そもそもオークションは、最も高い入札額を提示した人が購入する権利を得るため、希少品などの場合には定価より高くなる場合も少なくありません。しかし、「即決価格」を付けて出品された商品は、即決価格で入札すれば競り合うことなく購入者が決定します。今回のケースでは、この即決価格が定価より安く設定されていたのです。

 ネットオークションに出品されていた商品は「限定品」で、A社の路面店でしか販売しておらず、小売店には卸していない商品でした。A社の直販では、高級ブランド雑貨という性質上、原則として値引きはしていません。偽物なのか、それとも本物がA社から流出しているのか──

 ネットオークションでの出品状況を見ると、偽物を作って売っているにしては流通量が少ないこと、またA社は値引き販売しないため、定価で購入した人が定価より低い価格で出品するとは思えません。そうしたことから、A社内では「従業員による横領説」が有力となっていました。

 B専務との打ち合わせの結果、(1)その時点で把握しているネットオークション以外で、販売されていないかの調査を実施、(2)実際にネットオークションで購入して、商品状態の確認を行うことになりました。

 

 まず、A社が販売する高級雑貨のブランド名、商品名、型番などをキーワードに調査をしたところ、個人向けのリユース品売買サイト(スマホアプリ)でも同じように「新品」として販売されていました。

 出品されていた商品を一通り実際に購入して確認したところ、それらの商品は明らかに本物で、A社の在庫として存在したものであることが分かりました。というのも、独自の梱包材と各商品に取りつけるタグが本物であると確認されたからです。

 これらにより、残念ながらA社の在庫品が流れていることが、ほぼ確実となりました。

 サイト上の出品者Y氏の氏名と、納品書記載の返品先住所である個人宅の表札と登記上の所有者が同じ「Y」であることも判明しましたが、A社従業員との関係性は見出せませんでした。

 そのためB専務は社長とともに、在庫管理担当者2名に対して横領の事実を問いただそうとしました。しかし、確たる証拠がない状況で従業員を疑うことは大きなリスクが伴うことを説明して、踏みとどまってもらいました。

 確証がない状況で疑いのある従業員に話を聞いてしまうリスクとは、無実であった場合に大きく信頼関係を損なってしまうこと、そして調査状況が相手に伝わり、証拠隠滅を図られてしまう可能性があることです。 

 そのためトクチョーでは、インターネット閲覧履歴とメールを調査することを提案し、実施することになりました。

 会社のパソコンからネットオークションなどの管理画面や出品画面のURLにアクセスしていれば、横領を類推する間接的な証拠となります。一方のメール調査は、外部の協力者(出品者Yと考えられる)と連絡を取り合っている可能性もあるため、全メールのキーワード検索でヒットしたメール内容を目視で確認しました。

 その結果、インターネットの閲覧履歴の調査では、目ぼしい成果が得られませんでした。しかしメール調査では、メールの中から、返品先住所とともに、納品書に記載された出品者Yの電話番号がヒットしたのです。

 なんと、そのメールは倉庫の鍵を持つ2名が送信したものではなく、その上司である営業部長Xから送信されたものでした。

 Xは社歴11年、20代前半でA社に転職し、営業とホームページのSEO対策などの業務で頭角を現し、最年少で部長になった信頼の厚い人物です。営業部門の統括とともに、在庫管理の責任者も担っていました。

 調査の半年ほど前のことでした。Xが2名に対し、在庫品の整理という名目で、新古品引き取り業者だという出品者Y(偽名にしていた)に、100個以上、金額にして数百万円に上る商品を送付するよう、メールで指示していたのです。2名はXの意図を知らず、言われるがままにYに対して在庫品を発送していたのでした。

 売れ残っていた在庫であっても、会社の許可なく勝手に処分することは許されません。そもそも、A社とYの間に売買契約などなく、無償で譲渡したような状況でした。

 Xは、営業部長として在庫管理のエクセルファイルにアクセスできる権限があったことを悪用し、横領した商品の入荷情報など全てを消し去って、棚卸しの際にも見つからないように隠ぺい工作も図っていたのです。

 こうして確たる証拠を掴んだB専務は、社長とともにXと面談。刑事告訴しない代わりに損害額を分割で返済することを約束、自己都合で退職するよう勧めたところ、Xは「分かりました」と答えました。

 社長の温情で、分割返済について、「毎月きちんと支払えば利息は請求しない」としたそうです。それは、Xの会社に対する多大な貢献を考慮したものでした。しかし、自身の右腕としてXを信頼しきっていたB専務は、しばらく仕事が手につかなかったほど落ち込んでいたといいます。
 
 Xの横領は、友人であるYに頼まれて、売れ残った高級雑貨を格安で譲ったことから始まったそうです。Yから「売れ残った在庫を譲ってもらえれば、俺がネットでさばく。利益は折半しよう」と持ち掛けられ、最初は1個だったものが、ネットで面白いように売れることから、だんだんとエスカレートしてしまったのです。

 

 この事例のように、部長級の管理職による不祥事は、どのような会社でも起こり得るものです。実際に、トクチョーに寄せられる社内不正調査の相談のうち、管理職を調査対象とするものが多くを占めています。

 というのも、従業員数百名以下の中小・中堅企業では、営業と在庫管理、購買と経理、総務部と監査室といった、本来権限を分けるべき兼任例は珍しくありません。人が少ないため、信頼できる人材に仕事が集まるのは仕方がない面もありますが、権限が集中することで「不正の温床」となってしまうのです。

 世界的な不正の傾向に関する調査によると、いわゆる在庫を含む棚卸資産と備品の横領は不正全体の約16%を占め、贈収賄等の汚職、領収書不正に次いで3番目に多い不正です。

 日本では、統計が公表されている2014年のデータで、在庫品の横領を含む業務上横領罪の認知件数は963件でした。あくまで警察に認知された件数であるため、実際の発生件数はさらに多くなります。平均すると毎日数件どこかで横領が行われているのです。

 では、どのように防げばよいのでしょうか。社内不正の防止、早期発見という観点では、権限の適切な分離とダブルチェック、そして定期的なジョブローテーション(配置転換)の実施などが重要とされています。

 特に在庫管理においては、営業職と在庫管理職の分離、バーコードやICタグなどのシステムを利用した在庫のリアルタイムな把握、そして棚卸し回数を増やすことなどが具体的な方策として挙げられます。

 もちろん、複数の役割を担っている管理職全てが、不正を働いているわけではありません。しかし、社内で何か不正が発生したとき、会社から信頼されているものの、長年にわたって同じポジションにいて、誰からのチェックも受けていない人を観察してみるとよいかもしれません。

 

※この記事は事実を基にしていますが、登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。守秘義務のため、依頼者や調査対象者が特定できないように、事件の詳細は設定を変更しています。

※本記事は、トクチョーがダイヤモンド・オンラインに寄稿した「調査員は見た!不正の現場」シリーズの「会社の在庫をネットで転売!なぜ『管理職』が横領に走るのか」を改題・編集したものです。

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社員不正の実態解明には外部の調査を使わなければならないケースが多くあります。

創業53年の総合調査会社 株式会社トクチョーは

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